着物は、非日常の気分を味わえる楽しいアイテムだと著者はいう。しかし現在は、夏祭りや花火大会、結婚式やパーティー会場を除けば、和服姿の人を見かけることは少ない。なぜなら、着付けのルールや複雑でわかりづらいマナーが多すぎると人々が感じるからだ。
さらに自称着物歴が長い着物警察の取り締まりもあるため、着付けを習った人でも恥ずかしくて外では着られず家の中のみで着ている人もいるほど、着物の国は謎だらけ。そんな謎を一つずつ解決していくのが本書の目的だ。
着物の素材は現在では利便性も求められ様々な種類があるが、上質の天然素材である正絹は、吸水性、放湿性に優れ、蒸し暑い夏には涼しく、厳しい冬は暖かく日本の風土に適している。しかし、着物を一枚作るのに三千もの繭が使われ、生地の染めや仕立てに手間や時間がかかり大量生産によるコストダウンができない。店頭に並ぶまでには複数の会社が関わり価格は高騰する。そのため着物一枚、何十万、何百万円は当たり前。購入のためにローンを組む人もいるほどだ。
時代は変わり、四十年前はニ兆円あった市場規模も現在はその七分の一。その理由は着物の需要は減少し、高くて当たり前の時代からリサイクルショップやネットショップで気軽に購入出来るものとなったからだ。そんな状況でも着物自体は季節感を表す花や植物、生き物、趣味のデザインがあり、モチーフが豊富でユーモアに溢れている。
また、美しい手書きの絵が描かれた作家ものや、大正ロマンあふれる独特な色遣い、伝統工芸のような刺繍が施されたり、美術館に飾られるほどの芸術作品を誰でも手軽に身につけたり、リメイクすることもできる。また、それは二つとなく人と被ることもないため、今の時代だからこそできる面白さが着物にはあるのだ。そんな日本が誇る着物を活用しない手はない。
同じように考える人は山ほどいるが、そのモチベーションが継続する人はなかなかいない。著者のように気づいたら自らが行動する。人生ではそれが重要なことなのだとつくづく感じた。