HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】再生する会社とできない会社はどこが違うのか。『今さら聞けない中小企業経営のイロハを学ぶ やさしい経営改善の教科書』

 

著者は、これまで約20年間、事業再生に取り組んできたコンサルタント。これまで色々な再生事案に取り組む中で理解できたのは「利益を出すこと自体は難しくはない。しかし、真剣に取り組まないと実現できない」という、経営の本質であると言う。
赤字体質から脱却するためには、業界トップを目指せ!というのではなく、まず平均点の会社にしよう。それができないのは、言い訳をして、必要な取り組みをやっていないからに過ぎない、となかなか辛口のお言葉である。
しかし、掲げる数値目標は、売上高を2%上げる、原価を3%下げる、一般管理費を5%削減する、といった具合で決して高くはない。
「ハードルが高過ぎる!」と、むしろやる気を削ぐ様な目標よりも、それくらいならできそうでしょ? と、言い訳が利かない目標をクリアさせようという寸法だ。

万年赤字の会社は、企業として本来行なうべきことができていないために、赤字から脱けだせない、という状況にあると言う。
変革のための方法論としては、まず組織づくり。
組織図を作ることで組織構造と各自の責任を明確にする。
この解説の中で、ほう、そうか、と思わされたのは、責任者に求められる適性についての記述。
・やる気がある。
・素直である。
・コミュニケーション能力がある。
・数字が理解できる。
という四つ。
なるほど、メモメモ。

組織図の後は、要因分析。
収支計画を作り、資金繰り表を作り、予実管理を行なう。
予算と実績との乖離の理由を分析しないと、問題が見えなくなり、いつの間にか売上高が落ちてしまう結果が待っている。未達、超過、予算通りにはそれぞれ原因がある。売れているからそれでいいのではない。
そして、会議とは必ず意思決定をする場と認識することで、確実な行動を得るのだ。

上記以外にも、著者からの提言はなおも続くのだが、しかし、なんだね。当たり前にも思える様な事柄が、意外にもこんなにもちゃんとできていない、やっていないものかと多少驚いた。
事業についての分析を行なうということが、そんなに困難なこととは正直思ってもいなかった。
その会社が赤字会社にもかかわらず、だ。そりゃあ再生企業となって当然だろう。潰れてしまえば言い訳することも叶わない。

本書は、赤字体質の会社向けに書かれているが、むしろ好調故に分析を怠っている企業への警鐘ともなり得るのではないだろうか。
自身は言い訳をして逃げてはいないだろうか。そう自戒を求める経営者の方もどうぞご一読を。

今さら聞けない中小企業経営のイロハを学ぶ やさしい経営改善の教科書
作者:田中 孝樹
発売日:2021年9月21日
メディア:単行本

 

 

【書評】性愛にまつわる23人の体験談 『純猥談 一度寝ただけの女になりたくなかった』

 

誰もが純粋な恋愛ができるわけではない。時に人は過ちを犯してしまうもの。一般人である作者達が、各々の猥談をまるで純文学のように上品に書き上げ、読者の心にチクリと傷を残す1冊となっている。

飲み会の席でもこんな話はできない。それぞれ心の中に閉じ込めてきた猥談を、ここで打ち明ける。

この本に出てくる純猥談は、もはや他人事とは思えない。駄目だって分かってるのに、傷つくのは自分なのに、好きという気持ちが抑えられない主人公たちに、ドギマギしながらも共感し、切なくて心が痛めつけられる。

こんな失敗は二度としない。そう言いつつもまた失敗を重ねてしまう。そうやって男女は成長していくのだろうか。いつの日か、これは失敗ではなく、良い経験だったと笑える日が来るのかな。

夜に読んでいたら、過去の失敗を思い出して眠れなくなり、少しだけお酒の力を頼ってしまった。

 

 

【書評】同じ悩みの人を救いたい!『JUMBO MAX~ハイパーED薬密造人~』

 

主人公は小さな薬局を経営しているおっさん(53歳)。生まれてから53歳までずっとEDに悩まされている。しかし53歳になりなぜだか結婚できた美人との間に子供ができた。あれ?EDなのに。

人を疑うことがない主人公はとりあえず受け入れる。酒をたくさん飲んだし無意識の間にしていたんだろうということ。そんな時偶然手に入ったED薬(後のジャンボマックス)。ジャンボマックスを飲み主人公は初めて勃起を経験。しかしこの世に残るジャンボマックスは残り11錠。どうしても欲しい。

ここからが面白いのがこの物語、主人公は薬剤師だ。大学へ持ち込みカラムをかけ、分離、NMR成分を分析し自らほぼ同様のものを合成することに成功した。

しかし、最強、そして違法のED薬どんどんどんどん人生は悪い方向へ悪い方向へ行ってしまう。しかし、いいやつなおっさんは、世の中の同じ悩みを持つ人を救うべく純粋にせっせと製造をし続ける。いやー、つづきが楽しみー!

 

 

【新着記事】マネジメントは科学『駆け出しマネジャーの成長論』

 

世の中には様々なリーダーシップやマネジメントの書物があふれている。
読むと気持ち良くなれる自己啓発系、おれの成功体験というn数1系など、これらは抽象度が高く再現性が低いのが特徴である。

独自性のみが蔓延るマネジャー論に再現性の高いものは無いのか?と探している読者がいるのであれば本書をおすすめする。参考文献も記載されており信用できるデータに基づいているのが本書の特徴である。レッドオーシャンである精神論は取り扱っていないので安心してほしい。

本書はプレイヤーからマネジャーに昇進してぶつかるであろう壁を取り扱っている。
マネジャーの役割は何でしょうか?と問いを立てたときに「スタッフの管理」としか回答が用意できないのであればぜひ、本書をおすすめする。

マネジャーとは「他者を通じて物事を成し遂げる」ことが役割であり、自分で仕事をすることを棄却して、自分以外の人に仕事をさせることである。他者とは部下だけではなく、同僚や上司も含まれる。マネジメントする対象はあなたが思っている以上に広範囲なのだ。

初めて管理職を体験するのであればまず本書を手に取ってほしい。必ず現場に活かせる発見がある。

 

 

【新着記事】会社のスネをかじりまくれ!『会社とことん活用術』

 

もしあなたが独立を考えているとする。

会社員は搾取されている、ピンハネされているなど、会社員は世間からの風当たりが何かと強い。しかし、全員が全員独立する必要性も無いのも事実である。

本書を読むタイミングは「会社、辞めよっかな」と思ったときである。
下痢の時に下痢止めを飲むように、その時期にこの本は特効薬となる。

会社にある3つの宝を紹介する。
・会社にいる人
・会社にある技術
・会社が提供する環境

会社にいる人とは「無料コンサルタント」であり、暴風雨レベルで聞いてもいないことを教えてくれる人がいる。
会社にある技術とは一般技術と専門技術の2つ。挨拶やマナー、その部署ならではのスキルである。
会社が提供する環境とは会議室、パソコン、家賃などです。

質問をします。あなたが独立したとき、上記の3つはすぐに手に入るのでしょうか。
質問しようとしても誰に聞けば良いか分からず変なコンサルタントに高額にカモられる。
一般技術も専門技術も動画で学習できても失敗が許容される実践の場はありません。失敗したときはダイレクトな影響を受けるからです。
そして、オフィスを借りる、パソコンを揃える、椅子・机など自分のお金で揃え、自分のお金で維持していかなくてはなりません。

会社員はすべて無料です。最高ですね。視点を変える一冊。 

 

 

【書評】またもジャンルを飛び越えた怒涛の荒技。『あ・じゃ・ぱん』

 

1990年代以降、従来のハードボイルド小説作家の枠から抜け出した矢作俊彦が1997年に刊行した本書は、ハードボイルドどころか、もうSF作品である。改変歴史(オルタネートヒストリー)モノだ。

第二次世界大戦の終わりっ端の1945年7月18日、ソビエト軍満州に侵攻。8月4日には北海道に上陸。
パニクったアメリカ軍は、8月17日、原爆を腹に抱えたB29を出撃させる。悪天候により本来の目的地であった新潟への投下を諦めるも、事故により富士山火口に原爆が落下、富士山が消失。
9月24日、東経139度線を境に西側を米国と英国、東側をソビエト連邦が占領し、日本は分割統治された戦後を迎える。
西と東の境目には高い壁が建てられ、双方の交流は無くなってしまっていた。
西側である「大日本国(The Japan)」は、世界有数のメディア・コングロマリットである吉本興業の創業者一族が総理大臣となり政治を司り、主だった日本企業がアメリカ企業を旺盛に買収して繁栄を謳歌しているが、一方の東側「日本人民民主主義共和国」は社会主義国家となっており、ソ連同様に経済は停滞、国民の生活は貧しかった。

と、まぁ、もんの凄い想像力を以て作られた設定にまずおったまげである。
さらに、その架空の分断国家日本に於いては、三島由紀夫中曽根康弘長嶋茂雄加山雄三北島三郎明石家さんまなどの実在の人物が、実際とは異なるキャラクターを纏ってどかどかと登湯し、どこまでが本気なのか冗談なのか区別を付けるにはなかなか難しい独特のパロディとスラップスティックめいた活劇が繰り広げられていく。

主人公「私」はアメリカ在住の黒人である。CNNの特派員として、彼は日本への出張を命ぜられる。
彼が抜擢された理由は、学生時代にライシャワーに師事していたので、日本語と日本文化の知識に長じていた為であった。
しかし、彼は自らの日本語の語学力を恥じていた。何故ならば彼の話せる日本語は「東京弁」であった。
そう。戦後の日本は、アメリカの庇護の下、西側が発展。標準語は「関西弁」となっていたのだ。
「昭和の終わり」を取材するという表向きの名目によって西側に派遣された彼であったが、真の目的は東側の反政府ゲリラの党首である田中角栄へのインタビュー取材であった。田中サイドからの接触に応じた彼は、西日本から東日本へと突入を果たす。
そこでは権謀術数、闘い、そしてロマンスまでもが彼を待ち構えており、冒険小説としても爆発的な盛り上がりを見せるのであった。

この、壁まで建てての分断国家日本という設定は、例えば『仮面ライダービルド』など、他者による何らかの作品でも度々見受けることがあるが、その度、本作にインスパイアされてのことなのではないかと邪推してしまう。
それほどの無類の傑作である本作は、1998年Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞し、著者の代表作の一つとされているのである。

あ・じゃ・ぱん
作者:矢作俊彦
発売日:2009年11月25日
メディア:文庫本

 

 

【書評】自分以上に自分をを信じてくれる人に出会うと人生が変わる『科学的に幸せになる脳磨き』

 

脳科学者であり医学博士でもある著者は、一人でも多くの人に自分らしい幸せな人生を歩んで欲しいと思い、本書を書いたそうだ。また、本書に書かれているものは、科学的根拠に基づき誰もが身につけられるものだと言う。

著者は幼少期、父親が出刃包丁を振り回す常に身の危険を感じる家庭で育ったため、家族を感じられずそれがきっかけで無口、口下手になってしまい、人を信じない、人と関わらないようにしてきたそうだ。そのため、44歳まで恋愛経験がなく克服しようと結婚相談所に登録したが、話しができず全て断られてしまい、また、海外で荒業として3000人に声をかけるものの心をひとつにできるような相手とは出会えなかったそうだ。

自分を愛せない人は、人を愛することができず、何人相手を変えたとしても誰一人とも上手くいかない。自分が変わらなければ、何も変わらない。著者は、ついに自分自身を変えるために最新の脳科学研究から独自のコミュニケーション理論を確立した。また、セルフレスになり相手のために利他の心で接することで、ついに心をひとつにできる心温まる人と出会い、現在では奥さんと仲睦まじくお互いに褒め合い、足りないところは補い合い、一緒に仕事をしている。自分が変われば過去は関係なく、自らが望む幸せを手に入れることができると著者自らが証明した。

まだまだ著者自身も勉強中のため、時には奥さんと考え方が合わない時もあるそうだ。しかし脳科学によるとそれは、相手の問題ではなく、単に脳の使い方が人それぞれ違うために起こるもの。相手を批判したりせずにお互いの違いを認め合うことで素晴らしい関係が築ける。相手のいいところを見るようにすると、一緒にいてくれるだけでありがたいという気持ちが沸く。心温まる、心をひとつにできる人間関係を築くことが幸せで豊かな人生になるそうだ。

 

 

【書評】ゆく河の流れは絶えずして、しかも本の水にあらず。『最古の災害文学 漫画方丈記』

 

日本三大随筆の一つである『方丈記』。
だそうだが、浅学な私は存ぜずでいた。
著者である鴨長明は、平安時代末期、鎌倉時代初期の歌人であり、随筆家、文学者とのことで、古文といえば「古事記」くらいしか読んだことはないし、正直言ってあまり関心が無いジャンルなので、そりゃ知らんわな、というところだ。
しかしながら、「最古の災害文学」という謳い文句に乗せられて本書を読んでみることにした。漫画化ということで、そして原文が短いもののため、オリジナル要素も盛り込まれており、読み易く、分かり易いものになっていると思う。

地震や火災などの災害のみならず、飢饉、疫病、遷都による世の中や人心の乱れなどの人災に至るまで、数多くの災禍をその眼にして来た鴨長明は、それらの際の街並みや家屋敷が被害を受ける様や、人の嘆き悲しむ心模様などを綴る。
そして、自らの出処進退に関して絶望し、家族と離縁して出家し、人里離れた山の地に於いて独居し、今度はその暮らしぶりや心のうちを吐露していく。
鴨長明は、非道く狭い庵を建てる。広さは約3m四方、四畳半から六畳くらいのワンルームで、衝立で仕切って、生活、仏道修行、芸術の間と、三つに区分している。
作りはできるだけ簡素としたので、分解して他の場所へと移設することも可能というくらいなのだから、どれほどチープな物か想像が付くというものだ。

そこで、ただ日々を過ごすのみ。好きに琵琶を弾き、好きに和歌を詠み、ひとりで楽しむのみ。
都では、身分の高い方も随分と亡くなったと聞く。さらに身分の低い人々となれば数え切れまい。火事も多く、焼けた家の数はどれほどになるのか。
それに比して、庵の中は穏やかで、なんの心配もいらないと鴨長明は言う。手狭とはいえ、ひとりで住むにはなんの不足もない。
たとえ家を広く作ろうとも、誰と住むのか。親族、妻子、友人、主君、或いは財宝や牛馬のため。それならば音楽や草木を友とした方が良い。召使いも雇わず、自らの手を召使いとし、足を乗り物とすれば良い。
そうして、世を捨て身を捨ててからは、恨みも恐れも無くなった。もうあとはうたた寝の様に穏やかに死ねたら。今までに見た美しい風景が心に残れば十分だと、達観の境地を窺わせる。

そんな鴨長明だったが、さらに思考を深めることとなる。
仏の教えに従うのなら、何事にも執着心を持つなと言うのに、この草庵を愛するのも、閑寂を良しとするのも、結局は執着ではないのか。
自らに問うても答えは得られない。
ただ、阿弥陀仏の名を両三遍唱えるのみ。

この書を書き終えて四年の後、鴨長明はこの世を去った。
その刻の胸中は、果たして如何にしたのであったのだろうか。


最古の災害文学 漫画方丈記
作者:鴨長明、信吉
発売日:2021年9月15日
メディア:単行本 

 

 

【書評】情報システム部門に任せたら失敗するぞ!『RPAで成功する会社、失敗する会社』

 

RPAが流行している、RPAとはRobotic Process Automationの略で、業務をコンピュータを使って自動化することだ、数時間かかるコピペ作業とかがあれば、それを数秒ですることだ。しかしなぜRPAは進まないんだろう?。

なぜRPAが進まないか、それは情報システム部門に任せるからだ、RPAは細かい業務だと数日で実現できるが、そんな細かい業務を情報システム部門は把握していない、ヒアリングだけで時間がかかる。

その上、経費削減のためにやるのに大掛かりな仕事になってしまうとむしろ経費がかさむ。経費を使って作ってもすぐにフォーマットが変わると使えなくなり、また情報システム部門に助けを求める。そんなやり方ではRPAが進むわけがない。

ではどうすればいいだろうか?。成功している会社ば現場に専任をつけている。専任が少しずつ細かい業務をRPAかしていき、気づけば大きな業務が自動化されている。そんな流れでRPA化を、進めている会社は大成功を収めている。

本書は大企業だけでなく2-3人の会社で働いている人にもオススメだ。同じ作業をひたすらやることはないだろうか?。それが本当にあなたがするべき仕事なんだろうか?。そんな仕事は自動化して、大切な仕事に時間を使おう。それがRPAの醍醐味だ。

 

 

【書評】日本の伝統と新技術の融合が世界を席巻する『ファッション イン ジャパン1945-2020流行と社会』

 

本書は「ファッション イン ジャパン 1945-2020 流行と社会展」の公式図録である。戦後から現在までの世界から注目されている日本のファッションについて、時代背景と共に当時の写真や雑誌、映像なども交えながら、その魅力、ユニークさが表現されている。

本書評では「世界への挑戦」「A-POC技術への挑戦」「サスティナブルとデザイン」として掲載されているISSEY MIYAKEについて取りあげる。三宅一生の世界への挑戦は1970年代から始まり、裁断、仕立てをせずに身体の動きに合う「一枚の布」や、皮膚と一体化し、身体の動きを制限しない「第二の皮膚」などISSEY MIYAKEの衣服の革新性は世界を激震させた。

また、コンピュータテクノロジーにより、一本の糸から一体成型で服を作る技術を開発し、ロール状に編み上げられた一枚の布には、帽子や服、バックがすでに編み込まれている。着る人が線に沿ってハサミを入れて切り取り、服づくりに参加できるコンセプトの「A-POC」は、あたかも着物を反物から仕立てる様子を彷彿とさせる。

さらに、地球環境や資源の問題に向き合うことにより出来上がった作品は、一枚の布を折り紙のように複雑に折ることにより立体化させ、元の平面へも戻せるものなど、全てが計算し尽くされ、ファッションという概念を完全にこえている。古来からある日本のものと新技術を融合させるその独自性は、とても魅力的であり、世界中の人々から愛され続けている。このようにISSEY MIYAKEは、洋服の可能性を常に進化させ続けているのだ。