HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】すべての答えは自分の中にあった『精神科医がすすめる疲れにくい生き方』


精神科医で禅僧である筆者の新刊である。
著書を通じて禅僧でもある筆者の言葉が心に沁みてくる。本著では疲れないようにするのではなく疲れとどう向き合うのか、疲れにくい生き方について書かれている。

現代社会で疲れを感じたことがない人はおそらくいないだろう。それだけ現代社会は生き辛いと言っても過言ではない。そして何に対して疲れているのかが表現できないのが現代の疲れの特徴だと言う。原因がわからないとより疲れてくる悪循環に陥ってしまうのである。そのため、自分がどういう人間で、何を考えているのか、自分と向き合うことで疲れにくい生き方を見つけていくということである。無理矢理に自己肯定感を高める必要はなく、まず今の自分と向き合い、今の自分を感じることの大切さを教えてくれる。

仏教では生きるとは一切皆苦であるという。物事は自分が意図していないところで起き、情報はどんどん溢れていく。自分がこういう人間であるということをありのままで受け止める、それが確固たるものとして持てる限り、生きていく上で起こる困難を乗り越えることができるのだ。著書の中には著者による瞑想法も書かれている。ぜひ手にとってゆっくりと読みたい一冊だ。

 

 

【書評】死は恐れるものではない『優しい死神の飼い方』

 

遅ればせながら人気の死神シリーズ第一弾を読んでみた。どこかファンタジーであり、どこか現実的でもあった。医師が紡ぐ生と死のボーダー。医師だからこそ表現できる狭間の世界である。後悔があるから人は死を恐れるんじゃないだろうか。

死神が犬の姿を借りてホスピスに降臨したことから物語は始まる。『吾輩は猫である』っぽく始まるところがまたおもしろい。そして、浮世離れしていて世間慣れしていない死神の純粋な感情に気が付けば引き込まれていく。死神の性格を一言で表現するのであれば、映画『ジョー・ブラックをよろしく』の死神を思い出させるようなピュアさである。死神は私たちが思い描くおどろおどろしいイメージと常にかけ離れているようだ。純粋無垢で常に一心不乱である。

ホスピスと言えば死と向き合う場所と言っても過言ではない。
この小説では世を忍ぶ仮の姿の犬のレオは死が近い方の気持ちに寄り添い過去にさかのぼり、死んだ後に地縛霊にならないよう奮闘するのである。さすが医師だと思った。ホスピスにおける支援とは、実際に過去に遡れなくても、その人に寄り添い、その人のストーリーを聞き、その人自身が過去を受け止めることである。
後悔があると生きることに執着を持ち、死を恐れていく。そのためレオはその後悔を残さないために存在しているのである。後悔を乗り越えるのは簡単ではないが案外難しいことではないのかもしれない。読み終わった後に多幸感を与えてくれるそんな小説であった。

 

 

【書評】大企業で働く人に読んでほしい『No rules 世界一自由な会社、Netflix』

 

友人が読んで面白かったと言っていたので手に取った本。実はつい最近までhuluユーザーだったのだが、いよいよコンテンツに飽きてきたのでNetflixに変えてみたところ、観たい映画やドラマがたくさんあって感動している。方々からNetflixは凄いという噂は聞いていたので、ユーザーになったところで改めて何が凄いのか知りたくなったというのも動機である。

私も日本の典型的な大企業で働いているためか、休暇規定、経費の承認手続き、目標管理制度といったものに慣れ親しんでいた。しかし、その前提を根底から覆すのがNetflixである。休暇規定無し、経費の承認不要、目標管理無し。とにかく無い無い無い、まさにNo rulesなのである。「いやいや、経費精算の承認手続きなかったら使い込む奴出てくるでしょ」とか「休暇の上限ないとかどういうこと?」と、初っ端からグイッと心を掴まれてしまった。なぜそんなことが可能なのか。細かい話は本書に譲るが、どの考え方も「その行為はNetflixの利益につながるか」という問いが北極星のように光り、正解を指し示しているようだ。そしてこうした取り組みが成立する土台となるのが「真の意味で優秀な人材を集める」ということである。

経営や人事という観点から読んでも面白いのだが、私はプレイヤーとして考えさせられた。なぜルールを極端に無くしているかというと、クリエイティブな社員が最高のパフォーマンスを発揮してほしいからだ。逆に言えば、クリエイティビティが求められない仕事なら、きっちりルールで縛った方が安全安心なのである。私の仕事は研究職なので、クリエイティビティは最も重要な要素なのだが、会社のルールに従う内にいつの間にかルールに従うことを優先してしまっている自分に気がついた。これはヤバい。環境は恐ろしい。

というわけで、大企業で働く人には一度手に取っていただきたい。普段の当たり前を疑う機会になると思う。あと正直結構ページ数が多いので、個人的には章の終わりのまとめをざっと読んで気になるところを詳しく読むぐらいが丁度良いと思う。

当たり前を疑おう。

 

 

【書評】棒一本のグラフで組織が変わる『図で考えると会社は良くなる』

 

「上司にきちんと評価をしてもらえない」「組織は私のことを分かってくれていない」など組織で働く中で、このように悶々とすることを多くの方は一度でも感じたことがあるだろう。しかし、果たしてその要因はすべて上司や経営陣にあるのだろうか?この著書は組織の状況を一本のグラフで可視化し、組織を上手く機能させるヒントを教えてくれる。

 組織を変えることができるのは経営陣だけだろうか?当たり前だが組織に属する経営陣以外の人の方が数は多いため、いかに多くの組織に属する人々の気持ちを変えていくかが組織の改善に関わっているのである。業績がよく、給与などのお金払いが良いことはもちろんだが、やはりそのうえで人のふるまいが良い会社と言われる定義である。
 ここで大切なのはふるまいである。自分や組織が社会の中のどのあたりに所属し、どのような立場にいるのか、客観的にみることによって、立場を再確認する。この行為によって個人、組織が同じ方向に向かえる仕事観の共有ができるのである。著書では72のグラフを通じて組織を可視化してくれる。

 組織に大切なものは「敬意」であるとしめられている。上司と部下、組織と人、人と人、組織と組織外、組織に属する個人を取り巻くすべての関係性に敬意を持つと、些細な問題であっても解決しやすくなるのだ。どんなに社会が進化しても、大事なのはつながりなのだと改めて教えていただいた、そんな著書であった。

 

 

【書評】堀江さんが何者でもなかった頃『ゼロ』

 

堀江貴文氏が出所後に初めて書いた本。彼の幼少期から久留米大附設、東大、そして起業に至るまでの経緯が綴られている。

「今まで付き合ったことがないような仲間を作ろう」と思いHIUに入ったが、サロンオーナーの堀江さんのことをよく知らないので第一冊目として手に取ったのがこの本である。書店で見かけたことがある方も多いのではないだろうか。私もその一人で、なんとなく暴露本みたいな本なのかと思っていたが全然違った。

読む前と後とで堀江さんに対する印象が180度変わった。こう言っては失礼かもしれないが、泥臭い人生を歩んでこられたのだと感じた。特に女性やルックスに対するコンプレックスを吐露しているところなんて、ちょっとずるいなと思った。こんなのほとんどの男性は親近感を覚えてしまうだろう。

ぜひ読んでほしいのは、①自信がない人、②堀江さんのことを知りたい人、③HIUの新入生だ。③についてはまだ一冊しか読んでいないくせに生意気かもしれない。しかし少なくとも僕はこの一冊で心を掴まれた。

HIUに入ってまだ2日目だが、この書評が私のゼロイチになった。

 

 

【書評】春はあけぼのだけじゃない『本日もいとをかし!!枕草子』


 古典だから、なんか難しそう。そんなイメージの強い枕草子は、実は清少納言のエッセイ。後宮での生活で、好きなことやむかつくことが毒舌だけどユーモアたっぷりに書き記されています。「憎らしい人が、不幸な目に合うのはうれしい」など、共感ポイントがいっぱいです。

 例えばこんな感じ。「扉を開けっぱなしにするガサツな女は腹立つ」、「本人の前とは知らずに噂話をしてしまうと気まずい」「夜をともにした男が、明け方、グズグズしてだらしなく帰る姿に萌える」「男ってどうして美人の恋人を捨てて、ブスを妻にするのか?男って分からない」などなど。

 1000年も前に書かれたとは思えない、現代の私たちもついついうなずいてしまうものばかり。感性の鋭い清少納言が、様々なことをバッサリ切っていく姿にあっぱれです。

 学生の頃にここまで知ってたら楽しかったのにと思いますが、学校ではさすがに教えてくれないですよね。大人になってから、受験とか気にせず、改めて学びなおすのはやっぱり楽しいと、そう思わせてくれた漫画でした。

 身もフタもなく正直で毒舌な清少納言。ホント、いとをかしでした。

 

 

【書評】行き過ぎた幸福ブーム『ネガティブな感情が成功を呼ぶ』

 

タイトルにネガティブとか成功という言葉が並んでいるのは非常に残念だが、内容は素晴らしい。いつも思うのだが、心理学の本は内容が素晴らしいのにタイトルに安い言葉を並べるところが少し寂しい。

最近の幸福ブームは行き過ぎている。人間にネガティブな感情が備わっているということは何らかの意味や役割があるからである。ピクサーの『インサイド・ヘッド』にあるように悲しみがあるから喜びがあるのだ。
不幸せが幸せの価値を身体に刻んでくれるのだ。教えてくれるのではない。行動変容や思考変容を痛烈に強いるからこそ『刻む』という言葉を使う。

よい人生とは本当に幸福や楽しみだけなのだろうか?
楽しさを犠牲にして意味のある行為のみ実行するのが人生なのか?
そのような過度な尺度をもっている人が増えたように思う。
異なる二つの考えを行き来することを『心理的敏捷性』というが、その時々の状況で発生した心理的状態を行動に活用することが大事であり、そのときにネガティブな感情が生まれたとしても、その人の人格を確定させることはない。そのように感情を全体として大きく広く捉え、過度な解釈をしないことがよい人生を送るカギとなる。

ユングの言葉を引用するが私たちは神と共に歩み、悪魔と戦っている。
本書でネガティブの必要性を確認しよう。

 

 

【書評】内側から自分を変えようとするな『フロー体験入門 楽しみと創造の心理学』

 

本書のはじめにの部分を紹介する。
本書は「自己啓発本」をうたう多くの本とは異なっている。本書にはどうすれば自分を変えれるかよりもということよりも、自分の生活を変えるために何ができるかについて書かれている。

私の発見によれば、ほとんどの人にとって、自分自身がどうあるべきか、何をすべきかについて考えることから得るものは何もない。熟慮は難しい技術であり、訓練されていない人はすぐに落ち込んだり絶望をもたらすことがある。他方、フローはいわば外側から内側へと人生を変革する。

著者のⅯ.チクセントミハイ氏はとうとう言ってしまった。
考える技術のない人間の熟慮は過度な自責を促し絶望をもたらすだけ。
そして、フローこそが外側から自分を変えるきっかけになると。

今に集中するという言葉がネットで溢れかえって価値が暴落している。道端に落ちていても誰も拾わないだろう。生きるとはその瞬間の積み重ねであり、言い換えると、お風呂に入っているとき、洗濯物を畳んでいるとき、駅まで歩いているとき、電車にのっているときなどの体験を意味する。

上記のような私たちが一日に体験する活動の一つ一つに焦点を合わせ注意をそそぐ。
その努力が夢中をつくり、楽しみを作ることにつながる。
あなたは、たまにする掃除や皿洗いに夢中になったことはないだろうか?

もしあなたが陶芸家のように皿を洗うなら、毎日が恐ろしいほどフローの連続になり妙な高揚感が得られるだろう。

一読の価値あり。 

 

 

【書評】大切なのは売上が上がるかどうか『売上が上がるバックオフィス最適化マップ』

 

バックオフィス最適化と聞くと、業務の効率化を思い浮かべるかもしれない。しかし本書はあくまで売上や利益につながるか?を軸とする。ITと会計・投資の橋渡し本です。

採用管理、給与計算、経費管理など。ムダと分かっていながらも未だに手書きでやっていませんか?具体的なツール紹介はもちろん、投資対効果の考え方が記されています。

実際いくら投資をすればいいの?著者は「1人あたり月5,000円」と答える。一部の営業管理システムを除けば、数百円〜1,000円も可能!この投資によりムダな作業が減り、利益が上がる!

バックオフィスの全体像が図解などを用いて、わかりやすく解説されている。また、あとがきにそれらをより細かく記したテンプレートがある。自社の現状とあるべき姿を見直すことができる。

今回の新型コロナウイルス騒動が推し進めたDX・テレワークを見るまでもなく、IT活用は急務。気づいてはいるが、いま一歩踏み切れない経営者、総務、経理の方々にまずはオススメである。

 

 

【書評】ビジネスでフォースが注目されている!?『東京藝大美術学部 究極の思考』


今ビジネス業界ではMBAではなくMFAが重要視されているらしい。MFAとは美術学博士のこと。ビジネスにアートとはなかなか結びつかない人が多いだろう。著者はアートの追求そのものが自己覚知、そして論理的思考を育てると述べている。そしてその力を理力、フォースと表現している。

本書は東京藝大美術学部の卒業生や現役学生・教員へのインタビューを通じて思考力を育むヒントを探る内容である。東京藝大と言えば美術系大学の中でも最難関と言われる大学である。そんな東京藝大は指導よりも「見守る」ことを重要視しているのである。この見守りによって、学生たちは自分を客観的に観察し、自分の内なるものを他者に理解してもらうための言語的・非言語的な方法を培っていくのである。

著者は東京藝大で培われる力を理力と表現している。理力とはつまりフォースである。フォースと言うと宇宙的な力を連想するだろうか?実はそうではなく誰もが持っている道理のこと。非言語のアートを具現化する過程において、言語化することに好奇心を持ち、言語化するために没頭する理力が、ビジネスに活かせるなんて目から鱗の発見だ。先が見えないコロナ禍の中でこれからどう生き抜いていくか、自分に問い、創造する力は、実はアートを産みだす過程に必要なフォースなのだと言われるとなんだかおもしろい。