HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】大学選びは自分の夢の準備フェーズ 『大学選びをはじめからていねいに』

現代の日本社会は正解が決まっていない時代に突入した。
「やりたいことが見つからない」「自分に合う仕事って何だろう」と悩む人も増えた。
では「なぜ大学にいくのか」を真剣に考えたことはあるだろうか。
本書ではマンガ形式でゼロから進路選択について学ぶことができる。

大学選びは夢や職業から逆算することが大事である。
では自分の軸になる夢を見つけるにはどうしたらいいのか。
まずは自分自身を知ることだ。
自身の嗜好や向き不向きを知らなければ、
いくら情報を仕入れても意味がない。

そして自身の学びたい学問を明確にすること。
大学→学問→職業→夢と繋がっていくゆえ、
何を学ぶのかを決めないまま進学しても、
意味がなくなってしまう。
就職時のミスマッチも、上記が影響しているように感じる。

また本書は「大学の選び方」に焦点を置いているが、関連して「科目を学ぶ意味、学び方」に繋げたらより面白いと感じた。
科目を学ぶ意味を理解していない学生は多い。
科目が実生活に繋がっていることを知ることで、学ぶ意欲を高めることに繋がるのではないだろうか。

本書の中で「大学は親や先生が決めるものではない」というセリフがある。
「自分の進路は自分で決める」のだということを、
次世代を担う子どもたちにしっかりと伝えて行きたい。

【コミック版】大学選びをはじめからていねいに (東進ブックス 大学受験 TOSHIN COMICS)

【コミック版】大学選びをはじめからていねいに (東進ブックス 大学受験 TOSHIN COMICS)

【書評】自分にしか出来ない仕事があり、他人に伝達可能な形にしていない人は生産性を下げている『生産性―マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』

工場などでは、仕事は人に見られているのも、技術も受け継ぐのも当たり前、一方でホワイトカラーではパソコンを覗くこともなく、伝授もされなくては生産性は上がらない。

すぐに成果を出せ!と言われたらどうするだろうか、教育など未来への投資をせず、結果の分かりやすい今のやり方で量を増やすだろう。そして残業時間が増え、派遣社員でも雇うかとなる。

仕事の総量が一切変わらないやり方だ。生産性を意識するとどうか。部下を教育し、生産性を高め、テクノロジーを導入し生産を高める。仕事の総量を減らして結果を出す。これが生産性を高めるということだ。

本書は元マッキンゼーで人事教育を行っていた著者による生産性に関する本だ。

また、生産性に関して日本の企業の人事教育も問題点だという。日本の人事教育は平均的社員のために行う。そのため伸び代があるトップパフォーマーの教育がなされないばかりか、トップパフォーマーが自分の力は出しきれていないことに気づき転職してしまう。

スポーツ選手に置き換えると、トップパフォーマーがいた場合は、すごいコーチをつけたり、色々な体験をさせるのが普通だが、何故だが会社ではトップパフォーマーは自分で学んでくれるだろうと期待してしまう。

さてさて、このような感じで、前半は生産性とは何かという話、後半は徐々に具体的になり、最後は資料の作り方、会議の進め方とどんどん具体的になっていく。発売してすぐ購入していたものの今更読み、こんな良書を放置していたかと後悔した。必要な情報を正確に取れていないなんてなんと生産性が低いことか。  


生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

【書評】パソコン太郎さん作の絵本『パソコン太郎の夢の絵本シリーズ』第一作目! 『ぱそこんたろうといたずらいぬろうくん』

まいにち、いろんなことをパソコンでしらべるのがだいすきな、パソコン太郎。
あるひ、すんでいるまちのみんなのパソコンがたいへんなことに!

なにものかにコードがかじられ
さらにひっこぬかれている!
パソコンたろうは
じけんかいけつに乗り出します。
はたしてはんにんは?そしてなぜこんなことを?!

作者のパソコン太郎さんは栃木県内でパソコンまわり全般のお悩みを解決する会社経営(まさに絵本の主人公ですね)する起業家でもありますhttp://www.pasotaro.com
シリーズ本は現在全5巻

パソコンやスマートフォンを使い始めたお子さんと一緒に読んでほしい一冊です
※書評執筆者個人としては、いぬろうくんのお腹のモニター画面はいつ使うのか知りたいなぁ。

ぱそこんたろうと いたずらいぬろうくん パソコン太郎の夢絵本シリーズ

ぱそこんたろうと いたずらいぬろうくん パソコン太郎の夢絵本シリーズ


【書評】東京の思い出が子ども達に話せる教育マンガ『吉祥寺だけが住みたい街ですか 』

「じゃ、吉祥寺やめよっか」

人気のある街がどこも同じ風景になっていく一方で、地方に住む私には昔ながらの商店街はもう東京にしかないといっても過言ではない。

便利に変わるかわりに平凡になる吉祥寺。ここに憧れ寄ってくる人に警鐘を鳴らし、見過ごされた他の街の価値を伝えていく。

五反田、錦糸町秋葉原、蔵前、福生、経堂などなど・・・

私が両国の予備校に通っていたのは、まだ相撲部屋が沢山あり、テレビでよく見る力士がコンビニで立ち読みしていた。

澁谷や代官山に行かなければ買えなかった洋服も多かった時代だ。

今はどこの駅も風景が同じ、新築のマンションだらけで東京が面白いとは思えないが、街をあるけば昔の懐かしさが沢山あることにも気が付く。

このマンガを読んで外に出よう。

散歩をして、買い食いしながら東京の思い出を子供たちや外国の友人に話そう。

大人は思い出に、子どもは買い食いに浸れること請け合いです。

吉祥寺だけが住みたい街ですか?(1) (ヤンマガKCスペシャル)

吉祥寺だけが住みたい街ですか?(1) (ヤンマガKCスペシャル)

【書評】是非リーダーに読んでもらいたい本。今日本一の市はどこか知ってますか??『福岡市を経営する 』

人口増加率1位、地価上昇率は東京都や大阪府の約2倍、政令指定都市で唯一、5年連続で税収が過去最高、政令指定都市で唯一スタートアップ開業率が4年連続7%台、政令指定都市中で国際会議などの開催件数、8年連続1位。

これが現在の福岡市の事実である。そんな福岡市の市長が書いた本が本書である。

今日本中に若い市長が多く生まれてきている。高島市長も地方局のアナウンサーから36歳で市長になった。

本書を読んで感じだのはとにかく、自分の能力だけでなく、すべでをスケールさせること、ボトルネックを見つけ解決するのが上手い。

例えば、もとアナウンサーなので言葉の扱いが上手い。多くの人間は人に伝える時自分がしっかり考えていることをアピールするために、1から10まで話がちだが、高島市長はざっくりと伝えるのが本当に上手だと思う。ざっくりと分かりやすく使えると、人づてに物が伝わりスケールする。これは私も見習いたい。

また、熊本の地震では物資を皆が運ぶと、必要なものが必要なところに届かないと感じ、まずは物資を廃校に運んでもらい、その後必要な場所に的確に物資を運ぶ。また、十分集まった物資はSNSで持っていかないように呼びかけるなど、多くの人数の人間をコントロールするすべを身につけている。

SNSを使いこなすなど、高島市長は最新テクノロジーをリスクをとって次々と導入していくなどなど、この書評を通じて、広めたいこと、尊敬するべきことが沢山あるが、紙面が足りない。

とにかく本書は、リーダーなどに読んでもらいたい。もし、何か停滞を感じているのであれば、本書にはその停滞を取り除くやり方、どう変わるべきかが多く書いてある。物事を変えるには、バカ者、若者、よそ者が必要だ!! 

福岡市を経営する

福岡市を経営する

【書評】もう1人の自分にツッコミを入れてもらおう!『メタ思考トレーニング』

「メタ思考」や「俯瞰的に見る」事が大切だと巷ではよく耳にする。
だが、真の意味を理解している方はどれだけいるのだろうか。
不安な方はまず本書を手にとってみよう。

1つは答えを出す前に「なぜ?」と考えること。
そんなの知ってるわ!という方も多いかもしれないが、現場で実践出来ている人と自信を持って言えるだろうか。私はまだ言えない。
1つの課題に対して、

・そのまま対応する
・なぜ?と考えてから、対策法を考える

上記2つでは必ず答えが変わってくる。
明日から些細なことで試してみることをお勧めする。

もう一つは「隠れた共通点」を見つけることだ。
優れたアイディアは、一見共通点がなさそうな2点を結び付けている事が多い。
普段から「謎かけ」を意識してみると、隠れた共通点探しが捗るかもしれない。

類似書籍としては『メモの魔力』が近い。
事実を「なぜ?」で深め、別のアイディアや自身の行動に転用する。
本書に書かれている内容を、メモを使って鍛える方法が記載されているためぜひご一読いただきたい。

本書を通して、メタ思考とは「自分にツッコミを入れる」事だと感じた。
日本ではまだまだ自身の価値観や、世間の常識に凝り固まっている人は多い。
「本当にそうなのか?」ともう1人の自分にツッコミを入れてもらい、1人でも多くの人が凝り固まった状態から抜け出すことを願うばかりだ。

【書評】世界に認められるまでの苦労の話『PIXARピクサー 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』

 

ピクサーは最初から愛され、順調に成長し成功したのか?そう思っている人は、この本を読むことをお薦めする。
実際のピクサー成功の理由は、圧倒的な才能ある人、最高のクリエイティブ……だけではない対極にある「お金と戦略」だった。
世界にたくさんの夢を与えたピクサーが、与えるまでに立ち向かった苦難のストーリーでより勇気を与える本。
企業しビジネスで成功したい人、逆境を戦略で乗り越え成功したい人へのヒントも溢れているビジネス書。

ピクサーが成功する為の第1歩となった著者が話を受けるまでの葛藤と決断までの経緯が面白かった。
ジョブズにあってピクサーの話を聞くと言うと「なぜそんなことをするんだ?」と友人や会社の仲間に尋ねられたと言う。
話を聞いた後も、今にも倒れそうな会社の資金難やそれほどいいといえない勤務環境、仕事の負荷、失敗した場合のリスク等に不安を抱え続ける著者。
メンターに背中を押してもらい「なにか手が届きそうにないと思うものがあったとして、そこに向け、自分を信じて頑張るか信じられなければやめるかだと思えるようになった」と、思えるようになった著者。
ストーリーが動く時、成功するか嫌な体験になるかなど結末を知ることは出来ない。
それでも、誰かが何かを決めないと物語は進まない。ピクサー成功の背景に、彼がまず『アップル失脚やネクスト社の不穏』などいい状況じゃなかったジョブズの電話を受け、話を聞いた覚悟にあると思った。
成功を得る対価は、リスクを受ける覚悟があるか、不安でも気になる自分の心に従い行動するかなど求められると考えている私としては、彼の行動に納得ができた。
著者かTOPメンバーのエドやジョンと話し「彼らは商業的な成功がなくても勝つ、勝つ側の人間だ、いつどこでどのようにかわからないが。いつか、勝つ」と確信していた心情が面白かった。
そして、その確信がジョンの社員がみんな報われて欲しいと願う想いと結ばれると思うと嬉しかった。

「第4章ディズニーとの契約は悲惨だった」で書かれている、悲惨があまりにも悲惨だったので成功を掴めた事が奇跡のように思えたので後で紹介される戦略の数々を楽しむことができた。
中でも収益事業を見つける話は学ぶ事が多かった。
どの事業も収益をあげることが難しく、その中でディズニーとの契約は最悪で絶望的だった。
それでも、前向きに冷静に対応する姿に仕事へ取り組む姿勢について改めて学ぶ事ができた。
ジョブズも言い訳も反論もせず、著者と二人で学び二人で前を進もうとしてるという姿に微笑ましくなった。一方的でなく、自分のつけを担当者に押し付けお前の役割だろと能力の責務を追求せず受け止める姿が良かった。
ただそのお陰で、著者は泣きっ面に蜂といった窮地に立ちその心情に共感できる分ジョブズの判断のズレが笑えてくる。
ジョブズは前向きな判断と捉えたのか著者に「ピクサーに顔を出す」といい、ピクサー社員には「あいつを近づけるな」と言われている手前快諾できず、そんな中ディズニーから「制作オーダーダメ出し」による『トイ・ストーリー』の制作進行の遅延でてんやわんやする著者。
危惧していたボトルネックジョブズという不安要素」がここでも影響する。
それを『怪我による入院』といった一見不幸な出来事に見回れることで、ピクサー社への育ってきた愛や想いに気づき前向きになっていく著者の心の動きが面白かった。
そこから、問題にぶつかり壁を乗り越え望まれた形をどんどん具現化していき、エンターテイメントの会社として育てていく様はとても勉強なり感慨深かった。

企業家以外に、自身で発信するクリエイティブ制作に携わる人に読んで欲しい。
私自身、商業のwebプロデューサーを経て、現在エンタメコンテンツの制作に向き合っている。自身の作品が世の中に必要とされる確約がない中、それでもアウトプットしたい想いとメッセージや届けたい人がいて、それが人生をかける必要があるのか迷う。
さらに、コンテンツ制作は時間がかかる上に上記で述べたようにリターンが確実な物ではないので、何も得られないどころかマイナスを得る場合もある。
それでも大変な想いをして成功を納めたピクサーの裏の努力を知ると『コンテンツを作るということ』励まされ挑戦する自信に繋げられる。
さらに、作るだけじゃない現実的な評価やせいかつに活かすための気づきも得られる。

個人的には、株式上場にはあまり興味がない為、手法はあまりインプットデータとして参考にはならなかった。
金額や市場は規模というよりは、困難だと思っていた事をやり遂げた著者とそこに関わった全ての関係者のストーリーとしてとても良いメッセージが発信されていたと思う。
作品全体としては、「ヒットをしばらく打っていない」「ジョブズは終わった」そう人に陰口を叩かれ確証がなくても産み続け行動するジョブズの姿に勇気をもらえる。
人は、真意がわからなくても陰口を言うものだし、結果を出さなければ好き勝手に言う。
そんなことに負けずに、進んだからこそピクサーが産まれてくれた。ピクサー作品が大好きなので
数々の作品に出会えてよかったから、産まれて当たり前ではない背景を知ることができてより感謝と称賛が増した。
結末や評価は、蓋が閉まるときまでわからない。過程で、この発信は正しいのか、必要とされているのかなど迷う時もあっただろう。
けれど、諦めずに進み続けなければ見えないこともある。
光だけじゃない、暗闇の中、葛藤を乗り越え戦い続けた先に光があるという事を具体的に教えてくれる良い作品だった。
あと、全体的な戦略やアプローチ内容はもちろん、著者の課題に対する向き合い方やアウトプットの仕方など著者の冷静に成果をあげていく対応は学ぶ事が多かった。実践に活かしていこうと思う。 

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

【書評】ボロボロのオフィスで生み出された『トイ・ストーリー』人々はその瞬間、魔法にかけられてしまった『PIXARピクサー 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』

本書は、著者がスティーブ・ショブズ氏とかかわった12年間の中で、どのようにピクサーを成功まで導いていったのか、その経緯について書かれている。

ピクサーといえば現在では世界的有名企業で『トイ・ストーリー』『ファインディング・ニモ』をはじめとする数多くの代表作がある。しかし、著者が初めてピクサーを訪れた際には、素晴らしい技術者は多くいたものの、方向性も定まらず、資金繰りにも苦労し、ピクサーという知名度もない。まさに波乱万丈の状態であった。それは現在のピクサーからは想像もつかないことだ。

しかし、そのような状態であっても著者は、当時制作中の『トイ・ストーリー』をボロボロのピクサーの試写室で鑑賞した際にとても感激し、結果としてピクサーからのオファーを受け入れた。

著者は当時のピクサーの事業のことを「目隠しされて歩いている気がする」と語っている。それほど解決しなければならない問題が山積みであったのだ。もちろんそれを解決すべき人物は、元弁護士でもある著者自身であることは言うまでもない。また、問題は事業に関することのみならず、ピクサー社員とスティーブ・ジョブズ氏との確執もあり、その間で板挟みになってしまったのも事実である。

エンターテイメントという華やかな世界の、華々しい成功とは裏腹に、一企業と
しての苦悩が赤裸々に伝えられている。なかなかうまく進めないディズニーとの契約や株式公開までの道のり、度重なる作品の成功に至るまでの裏事情、また、『トイ・ストーリー』はどうして「トイ」でなければならなかったのか。映画を観た当時は、想像もしなかった内容ばかりだ。

ここ最近、個人的には映画館へ足を運ぶ機会が多いが、なかなかアニメを見ることがないため、本書をきっかけに今年公開予定の『トイ・ストーリー4』は、映画館の良い環境で、ピクサーで働く人々の技術面や経営面での苦労の結晶を確認してみたいと思えた内容であった。

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

【書評】世界に認められるまでの苦労の話『PIXARピクサー 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』

ピクサー最高財務責任者がみた、トイストーリーよりもっと前のピクサーの話。今では誰もが知っているピクサーがまだ日の目を浴びていなかった頃のことを、”お金”を軸に語られています。
最も印象に残っているのははじめての3DCGアニメーションであり、会社の命運を賭けた「トイ・ストーリー」の公開を控えたときの経営陣や制作陣の緊張感と不安。不協和音が漂っていたピクサーに安心をもたらしたのは大きな成功の体験でした。どのくらいの成功だったかは、みなさんのご存知の通り。
筆者であるローレンスとスティーブ・ジョブズの親交や信頼関係がみられることも本書の魅力のひとつ。安定を捨てて一本の電話で人生をガラリと変えたローレンスの判断は正しかったのではないか。
ディズニーやピクサー好きの方は映画の公開PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

前のシーンで熱くなれます。お金周りに詳しい方は財務の話で興味が湧くでしょう。幅広い内容で、エンタメ寄りでもビジネス寄りでも楽しめます。
大きく成功したプロジェクトにはそれに応じた準備期間がある。その準備期間をこの本とともに追体験してほしい。


【書評】ピクサーの天才たちを救った隠れた(たぶん天才でない)ヒーローの物語『PIXERピクサー 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』

スティーブ・ジョブズジョン・ラセター監督など、そうそうたる天才たちをもってしても、ピクサーは収益があがらず苦境にあえいでいました。ピクサーの大成功の陰には、天才たちとマーケットとの間をとりもった、裏方の悪戦苦闘のストーリーがあったのです。

スティーブ・ジョブズ本人からの招きで、ピクサーCFO最高財務責任者)に着任した著者、ローレンス・レビー氏の道のりは、苦難の連続でした。中でも株式公開(IPO)とそれに至るプロセスはまるで『トイ・ストーリー』そのもののような手に汗握る展開。選り好みが激しく強気なスティーブに現実的な落としどころを説得し、著者はなんとか状況をコントロールしながら紙一重でピンチを切り抜けていきます。後年、投資銀行の社員から、ピクサーIPOに関与すると決断した背景には著者に対する篤い信頼感があったと伝えられるくだりからは、著者の貢献の大きさがよく分かります。

また、著者がピクサーを立て直すにあたって、「人と企業文化」を非常に重視したことも目を引きます。才能あふれる社員と、創造性や革新性を重んじる企業文化こそが、ピクサーの価値の源泉であると見抜いていたのです。そこで著者は社員に報いるため、スティーブとギリギリの交渉をして社員へのストックオプションを実現したり、クリエイティブ面での決定権をジョン・ラセター監督らに委ねて企業文化が守られる体制にするなど、リスクの高い決断をしていきます。著者の仕事はピクサーを「稼げる企業」にすることでしたが、そのために人や文化を損なえば、結局ピクサーの価値が下がってお金を稼げなくなる。スタートアップ企業が陥りがちなこのワナをどう避けるか、著者は考え抜いていたのです。

本書は、すばらしい才能や作品がお金を生むまでのお話です。私が専門とするバイオテクノロジーや医療の世界にも、すばらしい技術や薬になり得る種がたくさんありますが、その多くは市場に出ることなく消えていきます。収益があがるようになる前に、資金が底をついてしまうからです。それだけに著者の偉業には尊敬の念を禁じえません。著者はスティーブ・ジョブズや、他の多くのピクサー社員と粘り強く対話しつづけ、戦略や方針を彼らと「共につくり上げる」という姿勢を貫きます。対話し、学び、共鳴する能力が、才能とマーケットを結び付けたのではないでしょうか。

企業だけでなく、家庭や個人にも通じる、大切な指針となり得るすばらしいストーリーでした。

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話