本書は、著者がスティーブ・ショブズ氏とかかわった12年間の中で、どのようにピクサーを成功まで導いていったのか、その経緯について書かれている。
ピクサーといえば現在では世界的有名企業で『トイ・ストーリー』『ファインディング・ニモ』をはじめとする数多くの代表作がある。しかし、著者が初めてピクサーを訪れた際には、素晴らしい技術者は多くいたものの、方向性も定まらず、資金繰りにも苦労し、ピクサーという知名度もない。まさに波乱万丈の状態であった。それは現在のピクサーからは想像もつかないことだ。
しかし、そのような状態であっても著者は、当時制作中の『トイ・ストーリー』をボロボロのピクサーの試写室で鑑賞した際にとても感激し、結果としてピクサーからのオファーを受け入れた。
著者は当時のピクサーの事業のことを「目隠しされて歩いている気がする」と語っている。それほど解決しなければならない問題が山積みであったのだ。もちろんそれを解決すべき人物は、元弁護士でもある著者自身であることは言うまでもない。また、問題は事業に関することのみならず、ピクサー社員とスティーブ・ジョブズ氏との確執もあり、その間で板挟みになってしまったのも事実である。
エンターテイメントという華やかな世界の、華々しい成功とは裏腹に、一企業と
しての苦悩が赤裸々に伝えられている。なかなかうまく進めないディズニーとの契約や株式公開までの道のり、度重なる作品の成功に至るまでの裏事情、また、『トイ・ストーリー』はどうして「トイ」でなければならなかったのか。映画を観た当時は、想像もしなかった内容ばかりだ。
ここ最近、個人的には映画館へ足を運ぶ機会が多いが、なかなかアニメを見ることがないため、本書をきっかけに今年公開予定の『トイ・ストーリー4』は、映画館の良い環境で、ピクサーで働く人々の技術面や経営面での苦労の結晶を確認してみたいと思えた内容であった。

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話
- 作者: ローレンス・レビー,井口耕二
- 出版社/メーカー: 文響社
- 発売日: 2019/03/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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