ブランドとは、お客様との間の「プロミス(約束)」です。そして、顧客とのあらゆる接点に於いて一貫したプロミスを伝え続ける為には、ブランドを俯瞰し、各所との連携を図ってブランディングを「プロデュース」していく思考が必要です。
本書の冒頭で、この様に著者は述べている。
ヒット商品を摸倣し、デザインを少し変えたり、値段を抑えた同種の商品をリリース。広告投下やメディア露出によって優位性をアピールして力ずくでシェアを拡大する。リスクを減らして手堅く利益を得る「TTP〜徹底的にパクる」という戦略は、商品に対する消費者の評価軸を価格とスペックに偏重させ、企業への信頼へとは繋がらない。
薬機法や景品表示法の改正に伴い、広告に対する規制が強化された結果、広告の大量出稿により認知を増やす戦略が取り難くなった。
加えて、コロナ禍によってメディア接種時間が大幅に増えた消費者は、ステルスマーケティングに騙されなくなった。つまり、情報を見る目が養われたのだ。
これらにより、消費者は目に見えなくても人を購入へと駆り立てる「情緒的価値」を重視する様になった。
「良いものを作る」だけではなく、その商品によって、企業は社会に何をもたらすのか。お客様は自分たちの何に価値を感じてくれているのか。
その「情緒的価値」の正体こそが「ブランド」なのだ。
ブランドとは、ロゴやパッケージなどのデザインではなく、お客様に与えるなんらかの価値であり、自社とお客様との間でその価値に対する認識に齟齬が無い様にしなければならない。
消費者に適切なブランドを伝え、長年支え続けてくれる「ファン」になっていただく為には、「こう思われたい」と「こう思う」を一致させる活動を企業は行なう必要がある。
パーパス、ビジョン、ミッション、バリューズ、経営計画・事業計画、これらを一貫性を持って企業内に浸透させること。それには、ブランドを「プロデュースする思考」が必要だ。
経営者は、指示だけ出して、あとは現場任せであってはならないのだ。ブランド意識を現場まで落とし込む。全社連携して一貫性のあるブランディングを進めるその方法とは如何なるものか。
ブランド・アイデンティティ(BI)の構築、ブランドを伝えるマーケティング施策、「リピート顧客」や「ロイヤル顧客」を創出する為のブランド・アイデンティティやプロミスの伝え方、顧客との接点たるフルフィルメントの在り方などについて、著者はノウハウや考え方を詳述してくれている。
通販事業、ことにD2Cは参入障壁が低い。それだけに商品の寿命は短命だ。数多のプロダクトたちに淘汰されない為には、ブランディングを確固たるものにする努力が必要なのだ。
ブランド・プロデュース思考
作者:工藤一朗
発売日:2022年9月21日
メディア:単行本