最近はあまりビジネス書を読んでいないので、たまには経営感覚にも刺激を与えなくては、と思い、本書を手にした。
デザイン経営という言葉は知らなかったのだが、デザイン手法を経営に持ち込むことなのかと想像して読んだのだが、そうではなかった。
「これからの経営にはデザインの創造性と美意識が欠かせない」という著者は、株式会社HAKUHODO DESIGN 代表取締役社長。「デザイン」といえば、プロダクトデザインやグラフィックデザインといった「カタチのデザイン」ばかりと思われがちだが、そのもっと手前にある、企業やブランドのあり方そのものを構想する「考えのデザイン」も求められるようになると感じる様になったそうだ。
強いブランディングの実現のためには、「カタチ」を整えるだけではなく、その背景にある「思い」を見定め、コンセプトから具体的なアウトプットまで一貫させる必要があるのだと言うのだ。
だからこそ、技術や機能の設計と分けることなく、また、経営とも無縁という考え方を捨て、経営者も「デザイン」についての意識を持つべきだとも言う。
なるほど、従来から言われる様な「経営理念」や「ビジョン」を「デザイン」という名に置き換えた訳か、と思いかけたが、これもそうではなかった。
SNSなどが発達した現代では、企業内部と外部への発信に乖離があってはならない。企業の考え方そのものが外部に対しても共感を得られなくてはならない。その為にはビジョンだけでは不足で、企業の内部と外部を繋ぐ「パーパス(Purpose)」が必要であるのだと説く。そして本書では、その後一貫して「パーパス」をテーマに置いて述べられていく。
因みに、「デザイン経営」という言葉は2018年5月に、経済産業省と特許庁が、成熟した国内外の市場で生き残るために、企業がデザインによってブランド価値を育て、デザインによって顧客の真のニーズをとらえ、イノベーションを起こす必要性を説くものとして政策提言をしたものだそうだ。
これだけを読んでも「デザイン経営」も「パーパス」もよく分からない。そんな方には、本書を読了することをお薦めする。
なお、個人的には、Purposeって「パーポス」だと思っているのだが、まぁそれはどうでもいいか。