殺人事件摘発件数のうち親族間における事件の割合は半数以上を占めるという。教育圧力に潰れた息子、酒に溺れて親に刃物を向ける男。本書は心に病気を抱えた患者とその家族を描いたノンフィクションマンガである。
著者の押川 剛氏は対象者と精神科医療をつなぐことを仕事としている。登場する親たちは口を揃えて「息子に殺される」と押川氏に相談する。エピソードはどれもショッキングなものばかりだ。
愛猫をバットで撲殺するなど1話から暴力的な描写も目立つ。読んでいて、とてもつらい。しかし厚生労働省によると精神疾患患者数は日本の総人口あたり約30人に1人の割合だそうだ。もちろん精神疾患にも程度の差はある。
患者本人はやはり専門的な治療が必要だと思う。一方でその患者の家族は誰がケアしてあげるのだろう?と思いを馳せる。子を持つ親が本書を読んだら、また違った感想をもつと思う。
評者はこれまで特別いじめられた経験は思い当たらない。人間関係においては比較的普通に過ごしてきたと思う。しかし、普通ってなんだろう?自分の心も何かの拍子に壊れてしまうのではないか?と考えてしまう。