現代は、栄養や安全は確保され、ムリしなくても生きていける。しかし逆に頭脳労働を長期的に行うことで、知らない間にムリが深くなってくる。ムリは限界に達すると、破綻する。それが、うつや自殺という形で表れる。
本書では、著者が自衛隊で教えている疲労コントロールの方法を、ムリ・ムダ・ムラの三つの切り口で解説している。
ムリしすぎて潰れないためには、複数のストレス解消法をもつことが良いそうだ。
陸上自衛官のストレス解消法には、運動、アルコールなどが多い。しかし紛争地への派遣中などでは、そういった行動は制限される。そうした教訓から、日頃から複数のストレス解消法を準備することを隊員に指導するそう。
ポイントは、「動」と「静」のストレス解消法を持つこと。特に「静」のストレス解消法を準備することを強調している。「動」のストレス解消法は、どうしても疲れが伴うからだ。
ヨガ、軽い散歩などは、疲労回復に効果があることが証明されている。他にも、森林浴、庭いじり、俳句や短歌、読書、音楽、料理などがあげられる。
そして評者がとくにためになると感じたのが、感情のムダ遣いを防ぐための、怒りのコントロール法。怒りの感情が起こったあとの、「七つの視点」による冷静な状況の見直しというのが、大変面白い。
自分目線、相手目線、第三者目線、時間目線、宇宙目線、感謝目線、ユーモア目線の七視点から怒りを見直してみると良いそうだ。
評者も時間目線くらいまでなら考えたことがあるが、宇宙目線、ユーモア目線というのは思いつかなかった。今度誰かにむかついたらやってみようと思う。笑
いかに怒りがムダだと思っても、怒りの気持ちが生じるのは変えられないし、変える必要もない。ただ、怒りの感情に乗っ取られるのではなく、それをコントロールしていくことは「変えられる」ことだ。
このように、私たちがストレスと向き合うには、変えられるものと変えられないものを区別して対処していくことが大切だと著者は語る。
本書では、極限のストレス状態を経験した、自衛隊員の著者だからこそ語ることができるストレス対処法が満載だ。きっとあなたにも役立つことが書いてあるので、ぜひ読んでみて欲しい。