この絵本を読んだのは小学生のころ、国語の教科書に掲載されていた。それ以来目にすることはなかったのだが、どうにも記憶の隅に残っていたので取り寄せてみた。本作品はマーケティングの絵本だ。
主人公のアナトールはねずみの一家の大黒柱だ、妻の他に6匹の子供と一緒に暮らしている。ある日アナトールは大きなショックを受けてしまう、ねずみに対する人間の悪口を聞いてしまったのだ。親友のガストンに相談をするが、それが当たり前のことだと諭されてしまう。
しかしアナトールは考える、自分たちが人間の食べ物をもらっている代わりに、自分も何かお返しができないだろうかと。その結果アナトールは一つの考えにたどり着く、自分は普段たくさんのチーズを食べており、チーズの味に対する判断であれば誰にも負けないという事実に。
このお話はその後アナトールがチーズ工場の試食室に忍び込み、様々なチーズを試食しその感想と改善点をメモに残し帰っていく。そのメモの通りチーズを改良したことでチーズ工場は大きな成功を収め、アナトールはささやかなお礼に毎晩チーズを受け取れるようになるというお話だ。
この絵本にはどのようなことをすれば相手に喜ばれるかという視点、それをするために自分は何が強みなのかという視点が含まれている。アナトールは経営不振なチーズ工場に対し、自身の“チーズに対する味覚”で価値を提供した。誰かの困りごとを解決するためには相手のボトルネックを知ることはもちろんだが、自分自身がどのような形で貢献できるのかを知ることも重要だ。漫然とした親切心はチームにとって動きを鈍くする脂肪でしかなく、いっそ削ぎ落としたほうが良い成果につながる。
絵本というとても短い物語であるが、組織・個人問わず仕事をしている人に読んでほしい一冊だ。子供の頃に読んだ物語だが、アナトールと同じ立場になったからこそ気づく面白さがあるだろう。
- 作者: イブタイタス,ポールガルドン,Eve Titus,Paul Gardone,晴海耕平
- 出版社/メーカー: 童話館出版
- 発売日: 1995/04
- メディア: 単行本
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