本書は、絵本が読み終わってから3分くらいで寝てほしいというたくさんの親側の想いにより作られた。また、子どもが親を寝かしつけるという想定もあり、一日の終わりにゆっくりと心を通わせられるのだ。
読み聞かせは子供にとっては「早く寝てほしい」という圧を感じてなかなか寝ないと言う。評者も子どもの頃、まだまだと一晩で何冊も読ませていたようだ。そのため、本書では背伸びをしたり、あくびをしたりとさまざまな工夫が施され、リラクゼーションやアタッチメントの応用が取り入れられている。実際に著者による読み聞かせを聞いてみたが、いつでもどこでもすぐに眠れるタイプでもないのに、かなり序盤のうちに寝てしまった。本書は大人にもかなりの効果があるようだ。
著者にとって絵本を描くことは自分の人生の全てであり、そのためなら何をするのも厭わない。制作過程では多くの人々へ調査し、絵本一冊を作るのに何千回も直し描いていく。しかし、一般的ではない著者の作風に対しては非難の声も多く、ようやく多くの人々の支持により再起をかけて挑戦したものの、その矢先に起こったさらなるバッシングや出版の差し止めは、著者の人生を再び苦しめた。
それは自分を支持してくれた人々をも裏切ることになると著者は大きな不安に苛まされた。また、そのバッシングは壮絶で、外に出ても週刊誌に追いかけられ、著者は日々追い詰められ再び生きていくことへの限界を感じたそうだ。どんなことがあったとしても人を追い詰めるほどのことは決してない。著名人だからといっても同じ人、何をしてもいいということにはならない。
そんな想いの中、試行錯誤し無事出来上がり、人々が手にできることになった本書をとてもありがたく思う。著者は、多くの人々の応援によりバッシングにも負けない世界に通用する絵本作家を改めて目指すそうだ。GoodやExcellentではなくOutstandingな生き方こそが人生をより面白いものにするものだ。