HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】哀しみがあなたにもたらすもの。『大切な人を亡くしたあなたに知っておいてほしい5つのこと』

 

著者は、一般社団法人日本グリーフ専門士協会代表理事
初めて聞いた「グリーフ」という名詞。「喪失体験に伴う悲しみや嘆きとその反応」を指すものだとういう。

本書は、日本グリーフ専門士協会がインターネットを介して開催している「グリーフサロン」を紙上に再現したものだ。
五人の遺された人々と、一人のファシリテーターが登場し、月に一度で、タイトル通り五回のサロンが開かれるというものだ。
会話式で進められ、毎章ごとにテーマとワークが一つずつ盛り込まれている。また、登場人物の一人に焦点を当て、合間合間に彼女の主観的な想いも挟みながら、サロンが重ねられていき、「グリーフケア」とはどういうものであるのかを読書に教えてくれている。
著者が実際に出会った人々とのやり取りをベースにしているだけあって、内容は違和感無く読み進められる。また、個々の事例を一つひとつ深掘りしている訳ではないことにも、好感が持てる。
死別や離別により、人にはどんなことが起きるのか。周りの人はどう向き合えば良いのか。恐らくそれは千差万別で、一概には言い切れまいと思うからだ。

本書では、登場人物たちに劇的な変化が起こる訳ではないが、自らに向き合うことと、吐き出すことで、哀しみと折り合いをつけていく。
心の傷にがんじがらめになってしまった人々に、「居場所」を与えるためのもの。それが「グリーフサロン」の存在目的なのだろう。

以前、東日本大震災によって福島から東京へ移転してきた方との対話で、誤った言葉を発してしまったことがあり、その時に、「被害を被った人々に、我々はかける声など持たないのだ」と思わされたことがあった。
それが、本書を手に取った動機だ。
そして、読み進めていく内に、今まで何人かと死別した時のことを思い出した。
私自身はグリーフで悩む者ではないが、それでもやはり死別というものは心に残っているのだ。