今まさに大学進学のために上京しようとしている若者が、東京行きの新幹線の車内で父親からの長い「手紙」に目を通す。そこには普段言葉を交わすことのない息子の将来を危ぶみ、人生を後悔して欲しくないと、多くの人々が信じている『常識の殻』を破ることを説いている。これは物語の形で読む自己啓発本である。
最初の章では多くの人にとって「ごく普通」の残念な人生について語られ、その後の章で、どうすれば充実した人生にできるのか、その心得が示されている。
例えば「お金を稼げることの中からやりたいことを選ぶ」や「失敗しないように生きる」等の誤った常識を疑い、失敗を恐れずに好きなことに挑戦することや、期待した結果にならなくてもそれは失敗ではなく良い経験を得たことになるはずであることなどを説いている。
目次で見ただけでも感嘆せざるを得ないこれらの教えは、実際に読むと更に胸に刺さることだろう。
また興味深いのが、成功者の常識を学ぶことができる読書の習慣化を読者に説いており、本書の最後に父親から息子に対して、読むべき18冊の本リストを紹介している点だ。これは著者のガチのオススメ本となっているため、きっと読者自身も読みたくなるはずである。
著者である喜多川 泰は元々は学習塾の講師であり経営者であった。授業の合間に人生の教訓などを生徒達に話していたのだが、その内容を本にしてみてはどうかと生徒に勧められたのがデビューのキッカケなのだという。読者への伝え方が上手いのは、元塾の先生ならではの彼の特性なのかもしれない。
最初に登場するダメなサラリーマンの人生の話は、自分のことが書かれているのかと錯覚するほどハッとさせられる。本書はそんな今の自分を変えたい、変わらなきゃいけないと強く思わせてくれる。ぜひあなたにも読んでいただきたい。
なお、本書の姉妹本とされている『賢者の書』も素晴らしい内容なので、皆さんにはぜひ併せてオススメしたい。