なんでもない日常ですが、時間が経つと、それが意味のある日だったと思い出したりしますよね。
この作品は、京都を舞台に男女の「きょう」を淡々と描いています。
友達の引越し祝い、車内での幼なじみとの会話、酔った友達にパシられて鴨川沿いを自転車で走る男、などなど、本当にどこにでもいる男女の「きょう」が語られています。しかし、その「きょう」という日は彼らにとって、なんでもない日であり特別な日でもあるのです。
この作品を読んでいると、自分のことではないのにとても郷愁を感じます。夏の夜の虫の音とぬるい風が、ふと蘇えってくるのです。それはきっと、筆者の飾らない文章が織り成すものなのでしょう。淡々と書かれるので、本当にありのままの、そのままの日常が描かれています。ですから、余計にその情景が心に入ってきやすいのです。
彼らの「きょうのできごと」は、いつか思い出になります。そしてそれは、私たちにも当てはまることです。「きょう」を懐かしむ日が、いつか必ずきます。
そんな「なんでもない日」の暖かさと切なさを、ぜひ彼らの「きょうのできごと」を通して感じてもらいたいです。