HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】『アドラー流気にしないヒント:自分にやさしくなれる法』 

著者は大学で経営学を学んだあと、外資系企業に勤めながら中小企業診断士の資格を取得。1985年からアドラー心理学の普及に携わってきた人物。
現在は、経営のかたわらカウンセラー/コンサルタントとして、企業の経営者・管理者の指導に当たっている。 
この本は、さまざまな場面で起きるネガティブな人間関係の改善に役立つ手法がケーススタディ別に書かれている。

 特に印象に残ったテクニックは下記のとおり
 ・「高すぎる目標を掲げない」・・・非現実的な目標を掲げられると、達成できないことがあたりまえとなり、達成する喜びが湧かなくなることでチームのやる気が低下する。 解決方法:「目標は、達成する喜びを味わえるレベルに設定」
 ・「教えすぎない」・・・教えれば教えるほど、受け取った側の負担は増える。
 コーチ陣がオーバーコーチすることで有能な選手の能力が発揮されないケースはよくある。 アメリカのメジャーリーグコーチ陣は選手から質問があって、はじめて意見を述べる。
 解決方法:教え過ぎないことでパフォーマンスがあがる。
 ・「残業なしにするだけでは、問題は解決しない」・・・「No残業day」を叫んでも、業務が効率化されるワケではない。 残業時間を減らすには「具体的にどの業務を減らすのか」、「どうやって減らすのか」明確にしなければ仕事量はそのまま。
非現的なスローガンは、組織に混乱を招き足並みを乱すこととなる。 
解決方法:大きな変革をするときは、全体の流れをシンプルにして、適切な改善を施す。

人間関係に必ず役立つ書籍であり、部下を持つ前に目を通しておきたい書籍でもある。
私も10年前に読んでおけば人生が変わっていたと痛感した。 

アドラー流気にしないヒント:自分にやさしくなれる法 
作  者:岩井 俊憲 
発売日:2023年4月27日
 メディア:三笠書房王様文庫

 

 

【書評】人生はたった一度なのに、あやまちは何度でもくり返せるものなのね。『チャンドラー短編全集3 待っている』

「一、二集がまずまずの売れ行きを示しているのだろうか。再度のおすすめで、引き続きチャンドラー傑作集の三、四集を編むことになった」
と、訳者あとがきにあるが、こちらとしては実に有難いことだ。お陰で魅力的な作品を更に多く拝めることになる。
レイモンド・チャンドラーには生涯で七作品しか長編作が無い。そしてその多くが幾つかの中編作を組み合わせて書かれており、プロットが多岐に亘り、複雑で分かり難い印象を読者に与えがちである。
本書にも、長編作「湖中の女」のベースの一つとなる「ベイ・シティ・ブルース」や、同じく「さらば愛しき女よ」の一部のネタ元になっている「犬が好きだった男」が収録されているが、これらを読むと案外とシンプルなのだなと、長編作とは違った味わいを感じることになるし、また、これらが長編作にどうやって組み込まれるのかが分かって興味深いものがある。

「ベイ・シティ・ブルース」では、珍しく警官と行動を共にする羽目になった私立探偵の主人公が、受動的ともいえる態度を取っている為に、物語は何処へ向かっているのだろうという不安定さをなんとはなしに感じる筆運びであったものの、最後には探偵はチャンドラーの主人公らしくしたたかさを発揮して事件を解決に導く。

続く「真珠は困りもの」では、老婦人の盗まれた真珠の首飾りを探すことになった主人公が、事件の最中に出会った気の良い大男とやはりコンビを組む。しかし、同じコンビでも前作とこうも違うものか。こちらの二人は互いに能動的、行動的だ。幾つかのアンソロジーに組み込まれていると言う本作はなるほど出色の出来で、二人ともナイスガイ、魅力的なキャラクター造りに成功している。情のある会話も楽しい。

また、「犬が好きだった男」は一人称形式の私立探偵物で、ベーシックと言える類いの一作品であるが、初期の物である為だろうか。主人公は元気で無鉄砲、作品自体もかなり暴力性が高い。

「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」は、推理小説物ではなく、訳者をして「老残を描き、本格探偵小説を揶揄した幻想編」と表現させる、人を喰ったなかなか珍妙な作品と言える。そして、三人称形式を採っていながら、登場人物の心情にも触れるなど、非ハードボイルド的とも言える様な、他の作品との文体の変化が為されているのは、これまた妙味である。

どん尻に控えし表題作「待っている」は、ドライで淡々とした名調子、それでいて感傷的なキレのある一作だ。チャンドラー唯一の短編作だそうで、これもまた違う意味で珍しい。
レア揃いで貴重な一冊なのである。

収録作品
「ベイ・シティ・ブルース」
「真珠は困りもの」
「犬が好きだった男」
「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」
「待っている」

チャンドラー短編全集3 待っている
作者:レイモンド・チャンドラー,(翻訳)稲葉 明雄
発売日:1968年8月10日
メディア:文庫本

 

 

【書評】人生はたった一度なのに、あやまちは何度でもくり返せるものなのね。『チャンドラー短編全集3 待っている』

「一、二集がまずまずの売れ行きを示しているのだろうか。再度のおすすめで、引き続きチャンドラー傑作集の三、四集を編むことになった」
と、訳者あとがきにあるが、こちらとしては実に有難いことだ。お陰で魅力的な作品を更に多く拝めることになる。
レイモンド・チャンドラーには生涯で七作品しか長編作が無い。そしてその多くが幾つかの中編作を組み合わせて書かれており、プロットが多岐に亘り、複雑で分かり難い印象を読者に与えがちである。
本書にも、長編作「湖中の女」のベースの一つとなる「ベイ・シティ・ブルース」や、同じく「さらば愛しき女よ」の一部のネタ元になっている「犬が好きだった男」が収録されているが、これらを読むと案外とシンプルなのだなと、長編作とは違った味わいを感じることになるし、また、これらが長編作にどうやって組み込まれるのかが分かって興味深いものがある。

「ベイ・シティ・ブルース」では、珍しく警官と行動を共にする羽目になった私立探偵の主人公が、受動的ともいえる態度を取っている為に、物語は何処へ向かっているのだろうという不安定さをなんとはなしに感じる筆運びであったものの、最後には探偵はチャンドラーの主人公らしくしたたかさを発揮して事件を解決に導く。

続く「真珠は困りもの」では、老婦人の盗まれた真珠の首飾りを探すことになった主人公が、事件の最中に出会った気の良い大男とやはりコンビを組む。しかし、同じコンビでも前作とこうも違うものか。こちらの二人は互いに能動的、行動的だ。幾つかのアンソロジーに組み込まれていると言う本作はなるほど出色の出来で、二人ともナイスガイ、魅力的なキャラクター造りに成功している。情のある会話も楽しい。

また、「犬が好きだった男」は一人称形式の私立探偵物で、ベーシックと言える類いの一作品であるが、初期の物である為だろうか。主人公は元気で無鉄砲、作品自体もかなり暴力性が高い。

「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」は、推理小説物ではなく、訳者をして「老残を描き、本格探偵小説を揶揄した幻想編」と表現させる、人を喰ったなかなか珍妙な作品と言える。そして、三人称形式を採っていながら、登場人物の心情にも触れるなど、非ハードボイルド的とも言える様な、他の作品との文体の変化が為されているのは、これまた妙味である。

どん尻に控えし表題作「待っている」は、ドライで淡々とした名調子、それでいて感傷的なキレのある一作だ。チャンドラー唯一の短編作だそうで、これもまた違う意味で珍しい。
レア揃いで貴重な一冊なのである。

収録作品
「ベイ・シティ・ブルース」
「真珠は困りもの」
「犬が好きだった男」
「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」
「待っている」

チャンドラー短編全集3 待っている
作者:レイモンド・チャンドラー,(翻訳)稲葉 明雄
発売日:1968年8月10日
メディア:文庫本

 

 

【書評】生命とは動的平衡の流れである『生物と無生物のあいだ』

生物と無生物のあいだと聞いて、皆さんは説明することはできるだろうか?著者である生物学者福岡伸一氏が自身の経験を踏まえながら「生命とは何か?」を考えていく本となっております。

物語はニューヨークにあるロックフェラー大学で、日本人には有名な野口英世がどのような研究をし、どのような評価を現地で受けていたのか?の説明から物語は始まります。その後ウィルスやDNAの発見までの物語、生物とも無生物とも言いにくいウィルスの特徴、残念ながらコロナウィルスで有名になってしまったPCR検査の発見やしくみなど専門知識がなくても読みやすく解説されております。ちなみにPCR検査はサーフィンが趣味のポスドクのマリス氏が、彼女とのドライブデート中にこの理論を閃いたという面白い逸話も書かれています。

そして最後に福岡氏は生命というものを定義します。それは「機械とは違い時間があり、その中には不可逆的な時間の流れがある。その流れに沿って折りたたまれ、一度折りたたんだら2度と解くことはできないものとして生物は存在する」、つまり「動的平衡にある流れ」と定義します。そこに至るまでの物語はもちろんですが、PCRの仕組みや生物学などにも興味ある方はぜひ読んでみてください。

著者 :福岡伸一
出版社:講談社
発売日:2007年5月20日 

 

 

【書評】現代流人材育成本『たった4年で100店舗の美容室を作った僕の考え方』

レッドオーシャンと言われている美容室業界で、たった4年で100店舗に急拡大させたプロセスと秘訣が書かれている。

店舗の課題に対しての答え、Q&A形式を用いて書かれている点が面白い。
緻密な分析努力とデータを駆使しているにも関わらず
それを感じさせない人間味ある経営手法で店舗展開している点は興味深いものである。

会社の成長という目的のために社員を育てているのに
社員を育てることが、逆に会社の成長を阻害させるという、皮肉な結果を招いてしまう
このジレンマを打ち破るためには、一体どうしたらいいか?という課題に対して
答えは、根本から会社の設定と設計を見直すしかないという。
設定とは再現性のあるものをどういう人が喜んでくれるか、
設計はこうしたらこうなるというマニュアルと環境で再現できるもの。

熟知している点は技術者であった著者の視点ならではであり、
業務に集中できる環境は心地よい。

私自身も同じような壁にぶちあたっていることから、すんなり入ってくる。
著者の北原氏は自宅に引きこもりゲーム三昧の青年だったが、
髪を自分で切ったがジョリッという音に心地よさを覚え、そのことがきっかけで、おしゃれに目覚めて美容師になり、実業家へと転身。
どちらかというと私も当てはまる資質であるが、いくつものキーワードがあり、
そのままのあなたでいいんだよという言葉は
むしろ成長を担う役割にもなっているようにも感じている。
経営者のみならず、あえて人を育てないは、実生活でも転用できるのではないかと思う。著者:北原孝彦 出版社:横浜タイガ出版

 

 

【書評】江戸前鮨入門『ごほうびおひとり鮨』

三十路を過ぎたOLが、10年以上付き合っていた彼氏と別れたので「どんな贅沢しても許される」と本格的な江戸前鮨をひたすら食べるマンガ。

コースとビールで10,000〜20,000円ほどの実在するお店が紹介される。「鮨わたなべ」(四谷三丁目)に始まり、
・「鮨 太一」(銀座)
・「鮨 麻葉」(乃木坂)
・「鮨 由う」(六本木)といったラインナップ。

また魚の旬や産地に関するうんちく、美味しい食べ方も知ることができる。

「失恋 × グルメ」で言うと、『忘却のサチコ』と近い設定かもしれない。しかし『忘却のサチコ』に見られる社内のドタバタなどは少なく、とにかく鮨を食べる。

全5巻にて完結。「メニューがない」「おまかせのみ」など敷居が高い印象の江戸前鮨。本書で値段や雰囲気を知った上で、登場するお店に足を運んでみては?

 

 

【書評】最狂バックパッカーの現地ルポ『ウクライナに行ってきました』

 

著者はイギリス、アメリカに留学したあと、面白い写真を求め世界を放浪した筋金入りのバックパッカー
アジアは勿論、アフリカや中南米の危険地帯を訪れ、その地で知り得たことを旅行記にまとめる活動を30年続けている。
そんな経験豊富な旅行作家がコロナ後、真っ先に訪れた国は戦時下のウクライナとその周辺国(ハンガリールーマニアモルトバ等)。
安全を考慮してウクライナにはポーランドから入国。
ロシア国境から500㎞離れているとはいえ、安全が担保されているワケもなく、現地では空襲警報が鳴り響いていたようだ。
そもそも、「戦争中の国に外国人がビザなしで入国できるのか?」。
世界一優遇されている日本のパスポートでも「対戦国、ロシアのビザがあった場合は、入国審査官になんと説明する・・・?」
情報が乏しいエリアの情報を収集して旅を遂行させる能力と、危険察知能力の高さに驚かされる。
90か国以上旅して培ったスキルは伊達ではない。

この本の特質すべき点は、現在、入国しづらいエリアの様子について触れられているほかに、現地及び周辺国で出会った方々の生の声が記されていること。
著者が過去に訪れた場所においては、過去との対比が書かれていること。

日本でもコロナウイルスが法律上、5類へ移行される日が近づいている。
3年間自粛していた人も順次、渡航を始めるだろう。
海外で待ち構えている危険を察知するためにも本書を一読してはいかがだろうか?
旅行のワクワク感を味わいながら、危険に対するシュミレーションができるはず。

ウクライナに行ってきました ロシア周辺国をめぐる旅
作  者:嵐よういち
発売日:2023年2月20日
メディア:彩図社

 

 

【書評】4年間潜入して書き上げた渾身の1冊『ルポ歌舞伎町』

著者は旧帝国大学を7年かけて卒業したツワモノ。
卒業するのに余分にかかった原因は、本人の学力不足ではなく、自転車で海外を放浪していたから。
卒業後は就職することなく、大阪の無法地帯「西成」に3か月潜入して自分の体験したことを文章にまとめ商業出版をなし遂げた。
そんな著者が今回、潜入場所に選んだのは「新宿歌舞伎町」。
調査に費やした期間は4年。その内、1年間は複数のヤクザの事務所が置かれ、住人の半数以上がヤクザ、ホスト、風俗嬢といわれている「ヤクザマンション」。
著者自らリスクを背負い、歌舞伎町の暗部にどっぷりと浸かってきた。
この書籍は、歌舞伎町全体の時代の移り変わりは勿論、「ホスト」、「黒人ボッタくりバー」、「風俗嬢」、「ストーカーの裏側」を章別に深堀している。
特に心に残った部分は、キャバ嬢、風俗嬢に付きまとうストーカーを撃退することでシノギを得る男「チャーリー」。映画さながらの腕っぷしの強さと行動力、ハラハラドキドキの展開に目が離せない。

新宿は戦後、闇市、赤線地帯、台湾マフィア、イランマフィア、中国人密入国者等、何度も登場人物が変わってきた。戦後50年の移り変わりを記録してきたカメラマンは建物が変わることで集まる人が変る分析している。
ロジックに関しては本紙にゆだねるが、間もなく開業する「東急歌舞伎町タワー」。どのような変化がみられるのか楽しみである。

小説さながらのドキドキ感を味わいながら新宿の暗部を知ることができる良書。
作  者:國友 公司
発売日:2023年2月28日
メディア: 彩図社

 

 

【書評】成功の鍵は成し遂げたいことに気づくこと『お金の引力』

著者は資産10億、年収1億を稼ぐ日本のトップ1%に入る資産家。
恵まれた家庭環境とはいいがたい幼少期を過ごし、社会人としての滑り出しも自衛隊、パチンコ店員、家庭教師、不動産賃貸業と多くの転職を繰り返しお金とは縁遠い生活を送ってきた。
そんな、うだつの上がらなかった著者が資産形成に目覚め成功できたきっかけは、自分がなしとげたい大切なこと「家族を幸せにする」ことに気付くことができたからだという。
それまで興じていた、パチンコ、友人との飲酒をスパッと止めて一念発起。不動産賃貸業トップ営業マンを目指して、がむしゃらに働き続け結果を積み上げて年収を高めていった。
また、本業をこなす傍ら、隙間時間を利用して不動産投資を続けたことで巨万の富を築き上げた。

この本は、年収450万円、2000万円、1億円。置かれているステージにより求められる能力が異なり、各ステージでどのように行動するべきかについて書かれている。
また、著者が成功するまでに取り入れてきた習慣や物事のとらえ方など、多くの気づきについて触れられている。

一般的に事業で成功した経営者は、「会社を上場させる」、「会社の時価総額を3000億にする」など、家族や趣味をないがしろにして事業拡大にまい進しがちである。
著者が異なる点は、「家族を幸せにする」、「自分の夢を実現させる」、「恵まれない子供たちの力になる」ことを主眼において行動していることである。
40過ぎた人間が「自分のコンサートでドームを一杯にする」と発想しないものである。
著者は、夢実現のために、ボイストレーニング、ダイエット、美容、人脈作り、本気で実現する準備にとりかかっている。

「不遇な環境で育っても合法的に巻き返せる」そんなヒントを見いだせる良書である。

お金の引力
作  者:末岡 由紀(すえおか よしのり)
発売日:2023年4月15日
メディア:株式投資サンマーク出版

 

 

【書評】人の心に届くスピーチの指南書『TEDトーク 世界最高のプレゼン術』

TEDとは、テクノロジー、エンターテインメント、デザインの3つの分野から感動や衝撃を生み出すアイデアを紹介し、広めていこうとすることを目的とした非営利組織(NPO)です。TEDの使命は、世の中にある価値のあるアイデアを広めることです。

動画でもTEDを紹介した映像が見られますが、本書では偉大なリーダーや起業家が聴衆にプレゼンスをするためには、何を伝え、何のために、どうやって、何をするべきかといった構成の仕組みが詳細に説明されています。

一般的な人々は「何をするか」から始め、運が良ければ「どうやって実行するか」を語りますが、本書には、聴衆に自分の伝えたいことが伝わるようにするための答えの切れ端が見つかるかもしれません。

本書は、自分のアイデアを広く伝えるために必要なスキルを教えてくれる、有益なスピーチの指南書です。