HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】カリスマIT技術者の仕事術『その仕事、全部やめてみよう』

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システム開発技術者のカリスマが書いた仕事術の本。著者は、いわゆるITベンチャー社長となったり、超有名なソフトを持つ老舗企業の最高技術責任者に就任、また、小学生からプログラミングをしている。

私は、ITインフラ業務をしているが、プログラミングは大嫌い。IT業界は、オタクでコミュニケーションが取れない人が多い。その経験から、本書の著者がプログラマーと知って、少し読む気を失った。

しかし、読み進めると、共感することが多かった。「谷」=短所を気にするのではなく、「山」=長所で攻めろ、と言ったり、血の気の多いスーパープログラマーたちを上手く連携させるために、まずはしっかりみんなの話を聞くことが大事、と語ったり。

著者は、スーパープログラマーかつスーパーマネージャーだと思った。技術をしっかりつかいこなしつつ、技術のある猛者たちといかに連携して、良いものを作っていくかの秘訣を書いている。

IT業界のことや仕事術を書いているため、IT業界のマネージャーにとてもおすすめ。IT業界の製品、ソフトウェアの名前も出てくる。

何かを成し遂げる現場の風景が見えてきて、楽しんで読めた書籍だった。

 

 

【書評】本は人よりずいぶん長く生きる『という、はなし』

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読書をテーマに、フジモトマサル氏が描いた絵に答えるかたちで、吉田篤弘氏が考えた小咄を集めたものである。

人はなぜ読書をするのだろう?
評者も本好きだが、「本の虫」とか「活字中毒」ってほどではないと思う。今までに読んだ本の数だって、そんなに多くない。あまりに分厚い本だと尻込みするし、うわー嫌だなーとさえ思う。時々嫌になってYouTubeNetflixばかり見ていたりする。それでもやはり、本のない人生は考えられない。

本を書く側の人である吉田篤弘氏でさえ、ついうっかり、映画と音楽とインターネットに山ほど時間を捧げている、なんてことがあるそうだ。

そんなときが続くと、ふいに砂漠の真ん中で、ひからびた水筒をひっくり返しているような渇望におそわれるらしい。そうして本棚に立ち戻る。

”そのときの本たちの、なんと寡黙で優しげなことか。置き去りにされていたことを恨むことなく、静かにこちらの記憶をほぐしながら、忘れていたことをひとつひとつ示してくれる。”

考えてみると、本というのは、白い紙に黒い文字がただ並んでいるだけ。こんなのを読んで面白がっているなんて、変態のような気がしてくる。ドラマとか映画の方がよっぽど楽しいやろって思う。

だけど最近は、何もかも完成されたものが多すぎて、本のこうした、ぶっきらぼうな感じが逆に良いのかもしれない。読者に自由に色付けを任せて、まさに読んだ人の数だけのストーリーが出来上がる。こうした本特有の”自由度”に魅了されて、読書がやめられないのかもしれない。難点は、一度はまると抜け出せないことである。

フジモトマサル氏の描く、読書に熱中する動物たちの絵も、シュールな吉田篤弘氏の世界観と絶妙にマッチしている。ずっと眺めていられるかわいさである。

 

という、はなし (ちくま文庫)

という、はなし (ちくま文庫)

 

 

【書評】新築でなくても大丈夫!『「リノベーション式」不動産投資の超バイブル 』

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住む場所を変える時に、「部屋が同じような間取りのものばかりで選べない」と感じたことはありませんか。
この本を読めば、「リノベーション」と「マーケティング」を不動産に施すことで個性的で入居者が途絶えない物件になります。

リノベーションとリフォームは違う。リフォームは元の状態に戻すだけ。一方、リノベーションは住む人が「心地よい」と感じ、愛着を持てる状態にすること。その中でも新築物件とコンセプトが被らない、時間の経過とともに深みを増す、
素朴で味わいのあるデザインが良い。

しかし、リノベーションされた物件は家賃も高く、普通の物件検索サイトからは出てこない。そこで、事前のマーケティング(種まき)が重要となります。具体的には、上記のコンセプトにあった家をシリーズとして束ねて、雑誌、SNS、メルマガ等で定期的に配信し、「おしゃれな生活ができる家」として認知してもらいます。そうすることで、引っ越し需要が出たときに直ぐに入ってもらえたり、引っ越す必要が無くても素敵な部屋に住むためだけに入居する方が出てくる。

本書は、不動産投資に興味があり、普通のアパートやマンションへの投資とは違った視点で検討したい方に、おススメです。また、おしゃれな家を借りたい人も本書を読んでおくと参考になると感じました。

評者は2020年現在、不動産投資の適切なタイミングなのか分かりません。一方で今後のことを見越して、今、不動産投資の勉強しておくのは必要なことだと考えます。

立地と広さ以外にも、リノベーションとマーケティングで不動産は変わる。

同じような形ばかりでワクワクしない部屋が多いので、この本をきっかけに、リノベーションが進んだ個性豊かな家が増えるといいですね!

 

「リノベーション式」不動産投資の超バイブル

「リノベーション式」不動産投資の超バイブル

  • 作者:巻口成憲
  • 発売日: 2014/01/28
  • メディア: 単行本
 

 

【書評】「うちの業務は特殊だからね。」じゃもう済まされない?!『売上が上がるバックオフィス最適化マップ』

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バックオフィスと聞いてあなたは何を思い浮かべますか。大部分の作業については、ITツールを導入することで業務改善の効率につながるのでは、といった漠然としたイメージを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。本書では、ITツールを駆使して事務作業の「無駄」を省く方法に限らず、それがいかにして社内全体の業務の最適化につながるか、業務改善の先を見据えたノウハウまでも知ることができます。

著者は、ITツールを導入し使いこなすには、部門・部署の壁を取り払うことが重要であると述べています。これは企業に勤めている多くの人が共感するポイントではないでしょうか。「このITツールは便利そうだ。」と経営陣が導入を試みても、部門ごとに必要とされるツールは異なり、結局コストをかけたにもかかわらず有効活用されないという事態は往々にして起こります。そのためには、経営陣がITツールを導入して何を成し遂げたいのかというビジョンを明確に描き、それを社員に共有することが重要になります。

また、バックオフィスの最適化が「従業員」目線だとすると、売上を上げるためには更に「顧客」目線でのITツール導入も検討することが必要になります。営業管理、販売管理、ウェブマーケティングなど、いわば攻めのITツールについても、「顧客」を軸にして見直しを図ることでそれぞれの会社にとって最適な解決方法が見つかるはずです。

本書の終盤では、「コミュニケーションツールは、結局何を使ってまとめればいい?」など、これまであまり深く考えたことはないけれども、迷いがちな質問に対するQ&Aコーナーもあり、経営者に限らず、全ビジネスパーソンにとって参考になる内容が豊富に含まれています。
20代30代の若いビジネスパーソンは、本書を参考にし、会社のITツール改善に向けた提言をしてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

【書評】短所を埋める仕事をやめよう『その仕事、全部やめてみよう』

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 忙しいのに、価値を提供できないチームは多い。著者は仕事の無駄を理解し排除することで、価値を提供できると考えている。本書は無駄な仕事・思考とは何かを解説し、対処法を述べている。
 例えば、短所を埋める仕事は、無駄な仕事になることが多い。理由は他と差がつかないため、価値に直結しないからである。逆に長所を見つけて伸ばす仕事は、他と差をつけやすいので価値に繋がりやすい。仕事は短所を埋めるよりも、長所を開拓する方が価値が高くなる。
 だが、実際は短所を埋める仕事が多くなってしまう。原因は、短所を埋めるのは楽で、長所を伸ばすのは難しいからである。短所は考えなくても発見できるため、分析が楽でかつ社内の賛同を得やすい。一方、長所は発見に時間と労力がかかるため、社内の賛同を得にくい。結果的に短所を埋める仕事=無駄な仕事が多くなってしまう。本書ではこのような状況の対処法について具体的に書かれている。
 忙しいのに、価値を提供できず悩んでいる方におすすめです。著者はベンチャー・大企業共に労働経験があり、両者に共通する無駄を解説しています。なので、企業形態問わず役立つ内容となっています。
 本書の対処法で、明日から無駄な仕事・思考に対処し、仕事を合理化しましょう。 

 

 

【書評】御社の「絶対コレ!」という組み合わせは?『売上が上がるバックオフィス最適化マップ』

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あなたの職場はITを使いこなせていますか?手作業での経費精算や給与計算に時間をかけていたり、上司のハンコをもらうためにテレワークができなかったり・・・。

適切なITサービスを導入すれば、このような作業がワンクリックで終わり、生産的な時間が増えることになります。
この本ではITサービス導入にあたって具体的にどんなところから手をつけていくべきか、どんなものを選択していくのが良いかを提案しています。

【意外と柔軟に考えて良い?】
目から鱗だったのは、第1章に出てくる「データ連携は重要だが、絶対ではない」という話。
会計や経費精算、給与計算など複数の業務を同じ会社のITサービスで揃えればデータ連携できてとても便利ですよね。でも、必ずしもそれが自分たちのやり方に合っているとは限らないため、別会社のサービスを組み合わせるのが適切な場合もあるのだとか。
その場合もCSV連携やAPI連携を活用して、業務の工数を減らすことができます。
私が勤める職場も、複数社のサービスを利用してCSVを駆使して連携していました。同じ会社のサービスに揃えればいいのでは?とついつい考えがちですが、使いやすさや設定できる項目に違いがあるため、今のものを選んだのだろうな、と納得。

【テレワークのインフラを見直そう】
新型コロナウイルスの影響でテレワークをする人が一気に増えました。私も5月はテレワークして出社日数を減らしていた一人です。
ただ正直なところ十分な準備ができていたとは言えず。
第2章の終わりではテレワークのインフラについても対策を提案しています。
今後、多様な働き方を取り入れていけたらいいな〜なんて経営者でもないのに勝手に思っているので、この辺も情報収集していきたいです。「仮想オフィス」なんていうのがあるんですね、気になります。

【自分の職場を見直してみると・・・】
この本を読みながら、ウチの職場はどうだったかな?と思い出してみると、本の中で紹介されていたサービスも使いながら、現場にあったものを選び効率化を図っている様子。
たとえばSmartHR、ジョブカン勤怠管理、ジョブカン経費精算。そしてコミュニケーションツールはSlackを利用しています。この組み合わせが最善なのか、この機に見直してみようと思います。

「これから何か導入しよう」と考えている経営者さん、「今の在り方で問題ないだろうか?」と心配している総務の方、「どこかで経費削減できないか?」と考える経理の方、この本にきっとヒントがあるでしょう。

 

 

 

【書評】我々の対決しているものは現実であって理論ではないのだ。『マネジメントへの挑戦 復刻版』

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Web広告でこの本を知った。
著者の一倉定氏のことは存じていなかったが、検索してみるとYouTubeに講習会の動画が上げられていたので、幾つか視聴してみたところなかなか有意義であったため、本書を購入してみた。

「55年前、日本の経営者を震撼させた「反逆の書」が今、よみがえる!」だそうだ。
著者は、経営コンサルタントの第一人者とされ、激しく経営者を叱り飛ばすこともしばしばで、「社長の教祖」「炎のコンサルタント」との異名を持つ。
だが、赤字会社と聞くと放っておけない、何とかしたい、というのが根底にあるらしい。出世払いで構わないと無償で指導を請け負うこともあり、そして黒字化を果たした会社からは去り、他のダメな会社を救いにいく。
また、叱り飛ばされながら指導を受ける経営者たちは、著者を恐れていた一方で、同時に親しみも感じていた様だ。巻末の長女によるあとがきでは、「父の目前で『鬼倉』『凡倉』と平然と話をされる」とある。

著者は、世の中に氾濫していた『きれい事のマネジメント論』を嫌い、そんなものに惑わされ、間違った経営をしてしまうことを改善するべく、従来のコンサルタントたちが掲げて来た定義や論理などを容赦無く否定しながら、経営に関する幾つかの事柄を9章に分けて詳述している。

これだけでいい、できるだでいいという計画は無意味だ。計画は本来机上論であり、不可能なものを可能なものに変質させるものだ。
計画どおりにいかなくとも計画は必要なのだ。未達の原因はどこにあるのか、どうすれば良かったのか、と考えることで工夫が生まれる。

社長を含めた経営担当者(著者は部長、課長職などをこう呼ぶ)は、まず自分自身を管理せよ。そして、部下を管理することばかり教えるマネジメント理論を否定する。
まず上を向くことである。経営者は顧客の方を、経営担当者は上役の方を向くことだ。よい上役になる前に、よい部下となることが本当に大切なことなのだ。

他にも、実施とは『やらせる』こと、統制とは、組織とは、財務に強くなる法、教育訓練、人間関係論、労務管理の基礎とは?
などが述べられている。

「今読むべき、経営学の源流」 という謳い文句が妥当であるかは、各々の読後の判断に委ねたいが、昭和40年に上梓された経営本が今改めて必要とされること自体に問題があると言えるのだろう。

 

 

マネジメントへの挑戦 復刻版

マネジメントへの挑戦 復刻版

 

 

【書評】台所のラジオから聴こえてくる声に耳を傾ける、十二人の物語。『台所のラジオ』

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小説に出てくる食べ物って、なんであんなに美味しそうなんだろう。写真とか、映像で見るよりも、言葉でさらっと説明される方が美味しそうに感じる。

本書は台所とラジオをテーマにした、短編集である。十二編の短編に、ちょっと変わった人たちと、美味しそうな食べ物たちが登場する。

なかでも評者が気に入ったのが、「マリオ・コーヒー年代記」。
”僕”の人生には、いつもマリオのコーヒーがあった。ごくごく平凡な僕の人生と、美味しいコーヒーを作り続けるマリオの人生。彼らの人生を振り返ってみると、あらゆるものが変わったような、何も変わらなかったような。普通の少年が普通のおじさんになるだけの話が淡々と進む。

著者の作品はどれもそうなのだけど、なんか寂しい。孤独感が常につきまとう。だけど妙に落ち着くというか、安心感があるので、もう一度読みたくなる。

本書のどの短編も読み終えるとき、「あれ、もう終わり?」って感じになる。なぜだろう?と思っていたら、物語の「始まりのところ」だけを書いてみたかった、と著者があとがきで言っていた。著者は物語の「始まりのところ」が好きなんだそう。

著者の作品に共通するのは、夢の中みたいな、ふわふわした、摑みどころのなさ。全てを説明しないどころか、少ししか説明してくれない。想像の余地が存分にあるところが、評者はとても好きだ。何かを得るための読書も良いけど、やっぱりこういうのも好きだなあ。

本書は、とにかく軽い気持ちで読めるので、疲れていて頭をリセットしたいときなんかにおすすめです。間違いなく、穏やかな気持ちになれます。

 

台所のラジオ (ハルキ文庫)

台所のラジオ (ハルキ文庫)

 

 

【書評】いつか飽きる、いつか終わる、しかし今つかんでいる。『ひらいて』

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「なんだ、女子高生が主人公の甘酸っぱい恋愛ものか。」
初めの数ページを読んでそう思った。だけど、読み進めていくと、どうも雲行きが怪しい。
あまりにも緻密な描写で、心を深く深く抉ってくるのである。

主人公は受験を間近に控えた女子高生の愛。そんな彼女が気になっているクラスの地味な男子、たとえ。そして彼が秘かに付き合っている美雪。この三人を中心に物語は進む。

愛は、何事にも情熱が持てず、人生を虚しく感じている。心が冷め切って、笑顔もはりつけたみたいだ。周りの馬鹿な生徒みたいに、心から素直に笑えず、自分を固い殻で覆って生きている。

そんな中、彼女はたとえに恋をする。それはもう強烈に。もはや恋なのかさえよくわからない。初めて沸き起こる感情に戸惑いつつも、人を愛することを通して、初めて彼女は、自分の人生と向き合っていく。

”正しい道を選ぶのが、正しい。でも正しい道しか選べなければ、なぜ生きているのかわからない。”

周りが当たり前みたいに、親や先生の言うことを聞いて前へ進んでいく中で、愛は必死にもがいている。世間が押し付けてくる”正しさ”に全力で争う、若々しいエネルギーに満ち溢れた愛を見ていると、常識なんてものを気にすることが馬鹿らしくなってくる。

調べてみると、著者の作品は学校の国語の教科書なんかにも掲載されているらしい。確かにこういう作品を、高校生の自分に読ませたかった。読書することで、もやもやと鬱屈した感情を言語化できることは、やはり大きな喜びだと思う。

ちなみに著者のデビューは「インストール」という作品なのだが、当時なんと著者は高校生だった。瑞々しく繊細な描写が得意なのは、やっぱり当時から培ってきたものなのだろうか。

衝動に突き動かされていくうちに、殻をやぶっていく愛を見て、清々しい気持ちになる。恋とか友情とか家族とか、人は何かと定義したがるけれど、本来はそんなに簡単に割り切れるものではないはずだ。強烈に、心の底から湧き起こってくる感情に、名前をつける必要なんてないのかもしれない。

ひらいて(新潮文庫)

ひらいて(新潮文庫)

【書評】人間形成に旅はかなり上質な授業だ。『悩むなら、旅にでよ。旅だから出逢えた言葉Ⅱ』

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本書では、著者が様々なところへ旅をして、その時々感じたことが素直な言葉で綴られる。詩のような美しい文章により、その時著者が見ていた風景が、色鮮やかに蘇る。

実際に、旅に出ることでしか出逢えない言葉というものがある。「百聞は一見に如かず」とはよく言ったもので、百回、エジプトのギザのピラミッドの大きさを聞くより、一回、本物を目にすればすべてがわかるのである。

著者が旅をする様子は、著者の生き方そのもののよう。身軽に、偏見を持たず、何事にもとらわれずに旅をしている。日常から離れて俯瞰的に物事を見ることができ、”今”に集中できるところが、旅の良いところかもしれない。

そんな旅において、何より大切なのは素直な心である。どんなものを見るか、よりもどんな心で見るか、の方がよっぽど大切だ。若い時には目で見たもの、感じたもの、すべての物事を吸収する力があり、まだ柔らかい脳と精神が、目の前にあるものの本質を見極めようとする。

しかし、同じ旅でもある程度年齢を重ね、判断力が培われていると、それが邪魔をして、実はそこにかすかに見えている新鮮なものを見逃すことがある。そこで大切なのは、いかに偏見を持たず、フラットな心で旅をするか。

現代は、インターネットで調べると、ある程度のことはなんだって知ることができる。そうして経験したこともないくせに、つい知った気になってしまう。こうやって人はどんどん頭でっかちになっていくのかもしれない。

自分の足で行ってみないと、何も始まらないし、何も見えてはこないのだと、本書を読んで改めて気づかされた。五感で感じることの喜びを、もっとかみしめて生きようと思える本だった。とにかく、偏見を捨て、もっといろいろなところへ足を運んでみよう。

 

悩むなら、旅に出よ。旅だから出逢えた言葉 (II)

悩むなら、旅に出よ。旅だから出逢えた言葉 (II)

  • 作者:伊集院 静
  • 発売日: 2017/07/26
  • メディア: 単行本