HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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生産性の概念がない人とは関わりたくありません。『生産性』&『自分の時間を取り戻そう』

私は生産性を高くしたい。なぜならば、やりたいことがたくさんあるからだ。逆に生産性の低い人とは絶対に関わりたくない。むやみやたらに人の時間を消費し、その人の人生の一部を殺すからだ。

こう思っている人は少なからずいると思うが、一体「生産性」とは何か、どうすれば高められるか分からない人は多いと思う。そんな人にオススメなのがこの2冊である。

著者は、生産性とは「アウトプット/インプット」だという。いくら手を動かしても全くアウトプットがなければ、生産性はゼロであるし、何も準備せずにいきなりやって、100点のアウトプットが出ずとも60点のアウトプットが出れば、生産性が高い状態であるといえる。

アウトプットは具体的に何であるかはケースバイケースだが、インプットに関しては大きく3つだけだと言える。時間、お金、頭が動く時間だ。

時間とお金は一般的だと思うが、3つ目の頭が動く時間がユニークだ。確かに人は毎日18時間くらい起きていられると思うが、せいぜい12時間くらいしか頭は動かないだろう。考えごとをしたり、クリエイティブなことができる時間も貴重な資源であると言われると納得できる。

では、どうやって「生産性」を高めるのか、どうやったら高められるのか。著者は別にショートカットキーを駆使して資料を早く作れるようになることが「生産性」が高くなることではないという。

生産性を高める方法が複数紹介されているが、ここでは、2つ紹介したい。

まず1つ目として、物事の本質を見定めて、その本質に対して集中することである。例えば、人事で新卒採用の生産性を高く行うには、どうすればよいか。エントリーシートを早く読めるようになることでも、メール対応を早く行うことでもない。そもそも、採用したいと思う人しか応募できないようにすればよいと根本的に考えを変えるのだ。

何がなんでも当社に入りたいと思う人しか採用したくなければ、入社試験を有料にすればよいし、頭のキレる優秀な人材しか採用したくなければ、エントリーシートの段階で難しい論文を書かせればよい。そうすればやたらに多いエントリーシートを管理する必要もなくなる。

何が目的であるかをはっきりさせる「選択と集中」が重要なのだ。

2つ目の生産性の高め方として、予定と実績を管理することが紹介されている。この仕事をやるにはこのくらいかかると予定を立てて、実際にやってみて、実際にどのくらいかかったか管理するのだ。予定と実績が必ずしも一致しないので、そこに生産性を高める機会、工夫する機会が生まれる。なぜ思っていたよりも時間やお金がかかったのかを考え、トライ&エラーしながら工夫するのだ。

最後に、著者はいう。生産性を高めるには、生産性を高めようと日々工夫していくしかない。

周りがバタバタしている時になにもできない人になりたいか。私はそうなりたくないし、そういう人と関わりたくもない。

 

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

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異端児が残した後悔しない生き方の知恵 『覚悟の磨き方』

吉田松陰という人物を知っているだろうか?

鎖国時代の真っ只中、黒船に乗って渡航を企み、結果投獄されてしまうが、仮釈放後に総理大臣二名、国務大臣七名、大学の創設者二名を輩出する松下村塾を設立。その後、幕府の老中の暗殺を企み最終的には「安政の大獄」で死罪となった男である。

 

異端児であるが、『自分の信念』を貫き通す情熱家である。また、かなりの勉強家でもあり、前述したとおり、設立した松下村塾ではとんでもない数のエリートを輩出した。

 

彼の教育への考え方には学ぶ所が多い。ひとりひとりを弟子ではなく友人として扱い、教えるではなく、ともに勉強しましょうと話したと言われている。


また、彼の言葉に『いかに生きるかという志さえ立たせることができれば、人生そのものが学問に変わり、あとは生徒が勝手に学んでくれる』という言葉がある。知識を伝えるのではなく、生き方を伝える。そんな教えがエリートを輩出する結果を生んだのだろう。

 

本書の構成は、心、士、志、知、友、死というテーマのもと、彼の言葉が描かれている。
多くのエリートを輩出した彼の言葉はシンプルで情熱的あり、自分の生き方を再度見つめ直すきっかけになるだろう。


他人に流されずに自分の生き方を貫きたい人、自分の生き方に迷いがある人などには是非読んでほしい。彼が命をかけて残した言葉はきっと背中を押してくれるはずである。

 

覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰 (Sanctuary books)

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日常から学ぶお金の流れ『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学』著者 山田真哉(光文社新書)

 今では書店のビジネスコーナーで必ずと言っていいほど目にする本書、2005年2月に初版を発行し2016年8月の発行分でなんと50刷目と、10年以上続くヒット作です。

 

タイトルになっている“さおだけ屋はなぜ潰れないのか?”というエピソードを含め、7つの具体的なエピソードを入り口に、会計学に触れる機会を読者に提供してくれます。
例えば、エピソードの一つにフランス料理店の話があります。
この店は繁華街ではなく、住宅街のマンションの1階に店舗を構えています。
住宅街にあるからといって決して大衆向けの価格設定にはしておらず、コース料理は1万円からと高級志向です。
どれだけ繁盛しているのかと著者がディナーの時間帯に覗いてみても、お客はほとんどいません。
それだけ聞くと出店場所と価格設定を間違えた明日にでも潰れそうな店ですが、開業以来何年も続いているそうです。
この店はどうやって利益を生み出しているのか、その秘密はランチとディナーの間の時間帯に隠されていました。

 

このフランス料理店のエピソードの結論は“連結経営”です。
なぜお客がいない高級フランス料理店が続くのか、興味を持っていただいた方はぜひ本書を手に取ってみてください。

 

お金がどれくらいあれば幸せなのかという議論はさて置いて、経済活動に身を置く以上、お金が生み出されるためのルールを知ることは有益です。
ビジネスマンはもちろん家計を預かる方、中高生など、お金に触れる全ての方に届けたい会計学の入門書です。

 

 

 

『挫折を経て、猫は丸くなった。』

この作品は「書き出し小説名作集」です。

こう聞くと「書き出し小説って何?」と思うかもしれません。

「書き出し小説」とは、架空の小説の冒頭一文だけを書いたものです。

つまり、それ以降の物語は読者自身が考えることになります。

想像することが好きな人にはたまらない一冊です。

では一体どんなものがあるのか、いくつかご紹介します。

 

 

“話が弾んだので、火葬はすぐに終わった。”

 

 

“「一人相撲、て知ってるか?」横綱の恋話が始まった。”

 

 

“神様お願い。右の人にして。優希は祈るような想いでDNA鑑定の結果を待った。”

 

 

いかがでしょうか?

どの書き出しも「これから何が起こるの?何があったの?」と、わくわくするものばかりですよね。

しかし、これらの物語はあなたの頭の中でのみ描かれます。

あえて語らないことで物語の可能性が広がる、人の想像力を利用した面白い試みです。

 

何か一味違った物語を読みたい人には是非とも読んでほしい一冊です。

 

 

挫折を経て、猫は丸くなった。: 書き出し小説名作集

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勉強ばっかりしないで、ゲームでもしなさい!?『AI時代の人生戦略 「STEAM」が最強の武器である。』

AI時代にAIを使う側になるためには「STEAM」が必要である。「STEAM」とはサイエンス(科学)の「S」、テクノロジー(技術)の「T」、エンジニアリング(工学)の「E」、マセマティックス(数学)の「M」+アート(美術)の「A」だ。


「STEAM」の重要性について、いくつも具体例が紹介されているが、その中で最も面白いと感じたのは「CNF」を例に挙げていたということだ。私も研究で飯を食っている人間の一人だが、最近本当によく聞く言葉である。
「CNF」はカーボンナノファイバーだ。ざっくりというと、植物繊維をほぐしたもので鉄より軽く、硬い。研究開発としては、とにかく混ぜて軽量化。アイスにも混ぜたりするらしい。
例えば「CNF」つまりS(科学)やT(技術)について知らないと、社会や会社に置いてきぼりをくらい脱落してしまう。今後は環境に敏感な人のみが生き残れるということだ。本書では他にも「STEAM」を日本人が武器にするためには教育を変える必要があると言うこと。あるいは、「STEAM」を武器にするための方法についても述べている。

 

著者の『成毛眞』については説明はいらないだろう。元マイクロソフト社長、HONZ代表の『成毛眞』である。
HONZ代表だけあって、今回の本の最後にも今すぐ読むべき本リストが載ってある。
私は『成毛眞』の本はすべて読んでいるが、どの本も読むと、読みながらポチポチしてしまい、次の日には大量のAmazonが届く。被害者である。今回も何冊もの本を買ってしまった。

さて、タイトルに書いた"勉強ばかりしていないで、たまにはゲームでもしなさい!"だが、今後、脱落せずに生きていける人は環境に敏感な人である。今、環境に敏感な人はPSVRで遊びポケモンGOで遊ぶ。勉強ばかりして遊びをサボっている人はこれからのAI時代を生き抜くためにしっかり遊んではどうだろうか。

 

ビジネスだけに利用するのはもったいない!『鬼速PDCA』 冨田和成著

高速を超える圧倒的なスピードでPDCAを回すことで、他人と比較にならないほど桁違いの速さで成長でき、どんなゴールでも実現可能に思えるよいになる。

誰にもマネできない圧倒的な成長スピードが身に付く本、それが『鬼速PDCA』だ。

PDCAといえば、よく用いられるフレームワークの一つで、PLAN(計画)、DO(実行)、CHECK(確認)、ACTION(改善)を行い、目的を達成する。そして、次のサイクルに改善案を反映させ、より良いものを求め、改善し続けるといったものだ。

しかし、この『鬼速PDCA』が普通のPDCAと違い、フレームワークの一つであるロジックツリーを計画フェーズで使うことにある。

これにより、改善したいテーマを構成している複数の要素が具体化され、「現状」と「ゴール」のギャップ、つまり、今後の課題がハッキリと分かるようになる。また、ロジックツリーを用いることで、課題の見落としを防ぎ、ボトルネックの発見にもつながることになるのだ。

本書によると、この計画フェーズがとても重要で、50%はこのフェーズで決まるのだという。また、その他の各フェーズでも、一歩一歩着実かつ高速に回すための方法、例えば、DO(実行)をタスクレベルまで細分化することや、時間がない場合は、「重要・緊急マトリクス」を用いて、DOの優先度を比較して入れ替えるなどといった方法が、詳しく説明されている。

PDCAというと、どうしても仕事上で使うものというイメージが強いが、この『鬼速PDCA』をビジネスだけに利用するのはもったいない。普段の生活にも応用するなど、人生の目標を叶えるためにも力を発揮するだろう。

計画フェーズで明らかになった複数の課題に対し、それらを一つずつ潰していけば、どのようなテーマでも実現に近づき、俄然、やる気も出てくる。決して魔法のようなツールではないが、着実に目標に近づくことができるツールなのである。

本書は、PDCAについて知りたい方はもちろん、今までPDCAにいまいち効果を感じられなかった方や、人生の目標に近づきたいという方に、おススメしたい1冊だ。

自分にかかった呪いを解く物語『本屋さんのダイアナ』

n式@長野です。
いよいよ部屋が寒くなってきたので、寝袋を引っ張り出してきました。
ミノムシ型の寝袋に入って、掛け布団と敷き布団の間に挟まって寝てます。
めっちゃ快適です。
キャンプみたいで楽しいし。キャンプで使っているせいか、なんとなく焚き火の匂いするし。
寝相が悪くて、布団がずれて、朝方寒くて目が覚めちゃう人(←正にわたしだ)は、一度、寝袋導入を検討されてみてはいかがでしょうか。

さて、今回紹介するのは柚木麻子の『本屋さんのダイアナ』です。
小説ですね。

柚木麻子は1981年生まれの作家で、いろいろ書いていて賞とかも貰っているのですが、なかでも『ランチのアッコちゃん』が有名かもしれません。テレビドラマにもなったようです。(見てませんが。)

本屋さんのダイアナ』。
ひとことで言うなら、女の子の成長物語です。
キャバ嬢の母親と二人暮らしのダイアナ(大穴と書く)と、雑誌に特集されそうな整った暮らしをしているお嬢様の彩子。小学校で出会った二人は、お互い本好きであることから意気投合し、大親友になります。
この小説は、ダイアナと彩子が小学生から中学生、高校生、そして大人になるまでを追った物語です。

メインキャラ二人がかなりの本好きなので、作中に本がたくさん出てきますよ〜。主に小説、それからエッセイ。本作のモチーフも『赤毛のアン』ですしね。
わたしの場合、二人の読書遍歴と被っていたのは『ライ麦畑でつかまえて』ぐらいでした。読んでない本とか出てくると、読まなきゃ!って気持ちになりますね(笑)

大人になるということ。

さまざまな物語で扱われる普遍的なテーマですが、『本屋さんのダイアナ』においては「自らの呪いを自らの手で解くこと」として描かれています。
と言っても、魔術や超常現象の類いが出てくるわけではなく。

それは、与えられた環境でサヴァイヴせざるを得なかった子ども時代の歪みを、大人になって、自分で選んだ環境のなかで解放する過程。
呪いは生き残るために必要で、でも、生き続ける上では邪魔になりますから。

例えるなら、変態。
羽化。
大人になるための通過儀礼

でも、呪いは一度に少しずつしか解けないから、手を替え品を替え、わたしたちの前に何度も立ち現れます。わたしたちはその度に、何度でも、自分を壊し、そして新しく作り替えていくのでしょう。

抽象的すぎる?

本好きの人と相対したとき、ちょっとした意見の食い違いはあれど、深いところで繋がっているような気がするのは、みんなそれぞれが、多かれ少なかれ「子どもの頃、読書に向かわざるを得なかった切実さ」を胸に宿しているから。
子どもの頃の孤独を(それこそ、甘いものから身を切るようなものまで、さまざまな孤独を)心に飼っているからなのだと思います。

人は傷を中心に成長する、みたいなことを言っていたのは、河合隼雄だったかな。
寝袋にくるまって、暗いなか目を凝らしていると、大学の合格通知を受け取ったとき母親にきつく抱きしめられた硬い感触を思い出したりして。
それを誤魔化さずにじっと見つめていると、胸の内側からコツコツと、控えめに、確かめるように、誰かがノックする音が聞こえてきて。
予感、と言い換えても良いのかもしれないけれど。

そうして胸に灯ったあかりを頼りに、わたしはそっと目を閉じるのです。
いつか、目醒めるために。

 

 

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

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オシャレはロジックだ!『ほぼユニクロで男のオシャレはうまくいく スタメン25着で着まわす毎日コーディネート塾』

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「オシャレに必要なものはセンスでもお金でもなくロジック」。
ロジックを身に着ければ、ユニクロ、GU、無印で十分オシャレをすることができる。
現役ファッションバイヤーであり、昨年メルマガでまぐまぐ総合大賞を受賞したMBさんによるコーディネート集である。

まずはMBさんによるファッションロジックを紹介しよう。
大原則は「ドレス」と「カジュアル」のバランスを考えることである。
ドレス、カジュアルとは?
100%ドレスな格好はテーラードジャケットにスラックスそして革靴のようなスーツスタイルである。
一方、100%カジュアルな格好はパーカーにスウェットそしてスニーカーのような格好である。
デートで、100%ドレスな格好をして行っても引かれてしまうし、
逆に100%カジュアルな格好で行ったなら子供っぽいと思われてしまうだろう。
オシャレにはこのバランスが必須なのである。
そこで、日本人にとって最も適したバランスはドレス:カジュアルが7:3だ。
例えば、ジャケットにデニムを合わせたり、パーカーにはスラックスを合わせたり、
ドレス、カジュアルのバランスを考えるだけでおしゃれに見えてしまうのである。

バランスを整えれば次は「シルエット」だ。シルエットは「I」「A」「Y」だ。
Iラインはトップスが細く、ボトムスも細い。
Aラインはトップスが細く、ボトムスは太い。
Yラインはトップスが太く、ボトムスは細い。
基本的にはこのシルエットを作ればおしゃれに見える。
難しいことを考えるのが嫌な人は細いボトムスを買えばいいのだ。上は細くても太くても何とかなる。
そこで、万能と紹介されているのがユニクロの「スキニーフィットテーパードジーンズ(2900円)」だ。
これは、足先へ向かって細くなっているためシルエットが綺麗。
そして、黒色(ドレス)のジーンズ(カジュアル)を使うことで自動的にドレスとカジュアルのバランスまで取れてしまうのだ。
トップスを適当に着てもある程度おしゃれに見えてしまう。

このような調子で、本書ではオシャレのロジックとともに最適アイテムをユニクロ、GU、無印から25着紹介している。
さらに、その25着を使ったコーディネートが70も紹介されている。
本書ではMBさんのロジックの基本を押さえることができ、ファストファッションで安く、簡単にオシャレになれるため、MBさんの理論の入門には非常におすすめだ。
また、理論だけを学ぶならコミック版も非常に分かりやすいのでおすすめである。

『服を着るならこんなふうに』
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あだち充の真骨頂!隠れた名作『ラフ』 著者 あだち充

あだち充と言えば『タッチ』や『H2』『みゆき』等多くのヒット作を生み出す日本を代表する漫画家です。

『ラフ』という作品は『タッチ』や『みゆき』に比べてあまり有名ではありませんが、私はこの作品があだち充の最高傑作だと思っています。

『ラフ』はあだち充作品の中では珍しい水泳漫画です。
主人公である大和圭介は競泳の実力者。しかし、本人には人を押しのけてまで勝つ意思というものがなく、そのせいか全国大会では万年3位。
そんな中、高校生になった圭介は飛び込み選手の二宮亜美という少女に、出会い頭に「人殺し」と言われてしまいます。その二宮亜美は圭介の家の和菓子屋「ヤマト」のライバル店である「ニノミヤ」の一人娘でした。最悪な出会いから始まる2人の青春熱血水泳漫画がこの『ラフ』という作品になのです

この作品があだち充最高傑作と思う、最たる理由は「演出」にあります。

あだち充はコマ割り、間の使い方、台詞回しを含む「演出」が特に光っている作家だと思っていますが、この作品はその全てにおいて完璧です。
特に最終話は、敢えて答えをハッキリとは描かず、しかしモヤモヤとした違和感は残さないで読了後の後味が凄くスッキリとした爽やかなものになるように考えられて「演出」されています。

最近の漫画は1~10まで何もかも詰め込みすぎてるものが多いと思います。そういう漫画はどうしても余裕がないように見えてしまい、作者の想像の範囲の物語しか伝わりません。
しかしこの『ラフ』という漫画は読者の想像力に物語を任せ、読者を信じ物語の可能性が広がる「演出」がされているのです。

もし、「読者を信じる漫画」を読みたいと思うのなら、必ずこれを読むことをお勧めします。

人生の快挙を追い求める物語 『快挙』

夫婦小説の傑作と言われる作品。
直木賞作家白石一文氏が描く結婚とは夫婦とは……。

主人公「俊彦」はうだつのあがらない写真家。写真だけでは食べて行けずアルバイトをしながら写真を撮っていた。
「みすみ」はバツイチの小料理屋の女主人。
俊彦が写真を撮りに訪れた街の風景。その偶然見た先に一人の女性を見つけた。それがみすみだった。

この小説には、そんな二人の出会いから十数年間に渡る夫婦の日常が淡々と描かれている。
しかし、時代や取り巻く環境の変化から夫婦関係は変化していく。
また、あるきっかけで小さなひびが夫婦関係に暗い影を落とす。
時折、夫婦生活についての場面があるが、心が離れていると体も離れていくのである。

「『夫婦とは なんと佳いもの 向い風 』逆境に放り込まれた時こそ、夫婦の真価が試される。」
翻弄されるわけでなく、夫婦の選択した結果はどうなるのか。

興味を引くのは才能についても描かれているところである。
「男の人は、これになりたいと強く思っていれば絶対になれるのよ。あとは時間がかかるかどうかだけ。早く夢がかなう人もいれば、想像以上に時間がかかる人もいる。だけど、脱落するのは諦めた人だけだよ」
みすみのセリフであるのだが、「女の人は?」と俊彦がいうのでまたそれは読んで確認してほしい。

人が何度ダメでもやり続けることができるのは、一種の才能であると私も思う。
それは、とても共感できたところである。

もう一つは、「才能ってのは草花じゃなくて樹木だと僕は思ってるんです。人間があれこれ手を加えなくても大きくなる木は勝手に大きくなるんですよ」
長く何かをやっていける人はその才能を持っている人だということではないだろうか。

白石氏の淡々とした語り口調は、派手さはないが心地よい。
そして、さらりと物語に引き込まれ、読了してしまうのだ。

結婚したい人、していない人、したくない人、人生の快挙とは何なのかこの本で見つけられるのではないだろうか。

 

 

快挙 (新潮文庫)

快挙 (新潮文庫)