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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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自分にかかった呪いを解く物語『本屋さんのダイアナ』

n式@長野です。
いよいよ部屋が寒くなってきたので、寝袋を引っ張り出してきました。
ミノムシ型の寝袋に入って、掛け布団と敷き布団の間に挟まって寝てます。
めっちゃ快適です。
キャンプみたいで楽しいし。キャンプで使っているせいか、なんとなく焚き火の匂いするし。
寝相が悪くて、布団がずれて、朝方寒くて目が覚めちゃう人(←正にわたしだ)は、一度、寝袋導入を検討されてみてはいかがでしょうか。

さて、今回紹介するのは柚木麻子の『本屋さんのダイアナ』です。
小説ですね。

柚木麻子は1981年生まれの作家で、いろいろ書いていて賞とかも貰っているのですが、なかでも『ランチのアッコちゃん』が有名かもしれません。テレビドラマにもなったようです。(見てませんが。)

本屋さんのダイアナ』。
ひとことで言うなら、女の子の成長物語です。
キャバ嬢の母親と二人暮らしのダイアナ(大穴と書く)と、雑誌に特集されそうな整った暮らしをしているお嬢様の彩子。小学校で出会った二人は、お互い本好きであることから意気投合し、大親友になります。
この小説は、ダイアナと彩子が小学生から中学生、高校生、そして大人になるまでを追った物語です。

メインキャラ二人がかなりの本好きなので、作中に本がたくさん出てきますよ〜。主に小説、それからエッセイ。本作のモチーフも『赤毛のアン』ですしね。
わたしの場合、二人の読書遍歴と被っていたのは『ライ麦畑でつかまえて』ぐらいでした。読んでない本とか出てくると、読まなきゃ!って気持ちになりますね(笑)

大人になるということ。

さまざまな物語で扱われる普遍的なテーマですが、『本屋さんのダイアナ』においては「自らの呪いを自らの手で解くこと」として描かれています。
と言っても、魔術や超常現象の類いが出てくるわけではなく。

それは、与えられた環境でサヴァイヴせざるを得なかった子ども時代の歪みを、大人になって、自分で選んだ環境のなかで解放する過程。
呪いは生き残るために必要で、でも、生き続ける上では邪魔になりますから。

例えるなら、変態。
羽化。
大人になるための通過儀礼

でも、呪いは一度に少しずつしか解けないから、手を替え品を替え、わたしたちの前に何度も立ち現れます。わたしたちはその度に、何度でも、自分を壊し、そして新しく作り替えていくのでしょう。

抽象的すぎる?

本好きの人と相対したとき、ちょっとした意見の食い違いはあれど、深いところで繋がっているような気がするのは、みんなそれぞれが、多かれ少なかれ「子どもの頃、読書に向かわざるを得なかった切実さ」を胸に宿しているから。
子どもの頃の孤独を(それこそ、甘いものから身を切るようなものまで、さまざまな孤独を)心に飼っているからなのだと思います。

人は傷を中心に成長する、みたいなことを言っていたのは、河合隼雄だったかな。
寝袋にくるまって、暗いなか目を凝らしていると、大学の合格通知を受け取ったとき母親にきつく抱きしめられた硬い感触を思い出したりして。
それを誤魔化さずにじっと見つめていると、胸の内側からコツコツと、控えめに、確かめるように、誰かがノックする音が聞こえてきて。
予感、と言い換えても良いのかもしれないけれど。

そうして胸に灯ったあかりを頼りに、わたしはそっと目を閉じるのです。
いつか、目醒めるために。

 

 

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)