ブラタモリのような地理が好き、地図が好きという方は一歩進んで、地図アプリを作ってみるのはどうだろうか。私はガラケーの時からGoogleマップを愛用しているが、どういう仕組みで動いているのか考えたこともなかった。しかし本書1・2章を読めばそれが理解でき、応用の可能性も浮かんでくる。それだけでも十分に本書には価値がある。
行政が公開している位置情報のデータはたくさんある。しかしアプリとなって公開されているものは少ない。なぜなら加工された位置情報には著作権があるため、非商用とされているからである。例えば狩猟者が使うハンターマップは紙で配布され、都道府県のホームページにPDFで公開されるのみなので、日本全体を確認するのには骨が折れる。ところが国土交通省が公開している国土数値情報ダウンロードサイトで全データを入手し、3章に従って操作すれば全体を確認でき、傾斜などの情報を重ねることも容易だ。
5章は防災マップのアプリ開発で、PWAという仕組みを使ってネイティブアプリのようにスマホ操作できるところまで解説されている。具体的には、平面と立体地図の切り替え、災害ごとの警戒区域の切り替え、災害ごとの避難所の切り替え、現在位置と最寄りの避難所との直線の描画などを実装することができる。ここまでできれば様々な活用方法があるだろう。
商圏分析などでの活用はより専門的な指標や手法が必要なのだろうが、本書の知識があれば、位置情報活用で何ができるのかのアイデアは得られるはずである。一方で趣味のレベルでも何かと使える場面があると思う。個人的な活用としては、全国神社の標高や近接する自然環境を抽出してその傾向が見られないか、住所ごとの所轄の警察署はどこか、などとてもニッチに役立たせている。
全ページ豊富な画像で説明されているのでとても分かりやすいのだが、4・5章はHTML/CSS/JavaScriptが文法の解説なく使われている。しかしそこは写経でも理解できそうなレベルで書かれているので、興味のある方は文法の学習からとは思わずに、ぜひ挑戦してみて欲しい。
『現場のプロがわかりやすく教える位置情報エンジニア養成講座』
作者:井口奏大
発売日:2023年2月28日
メディア:秀和システム