学生時代にサイゼリヤのミラノ風ドリアにお世話になった人はどれだけいるだろうか?
この本は美味しい料理の本ではない。サイゼリヤ創業者である著者が売れる店を目指し、足で稼ぎ、情報を得て、分析した結果のマーケティングの本である。
興味深いのはサイゼリヤが今の値段にたどり着くまでの試行錯誤の過程だろう。あらゆる経営判断は実験だそう。著者はその実験のためにとにかく情報を集めて統計的に判断をしている。レストランを繁盛させるために客本位であることは当然だが、そのために商圏とマッチしているか、社会に貢献できているか、そういったマクロレベルでの視点で分析していることが面白い。一人の客というミクロからメゾそして地域活性化というマクロレベルへ。この視点は目から鱗だった。
また、サイゼリヤ創業者ならではのリーダーシップ論もおもしろい。リーダーたるべきというよりは、組織があってのリーダーであるという着眼からむしろ組織運営について話されている。失敗体験からの成功の学び、そこからの効率化である。上司は部下を守るために存在するとはよく言うがまさにその通りである。いかに従業員が楽に楽しく働けるか、そういう労働環境を作ることによって、従業員個々が会社へ貢献したいと思うようになり結果的には会社自体への成長につながっていくという仕組みである。言うは易しだが、これを実践してきた筆者の言葉は重い。
あらゆる物事の成功は統計学に基づいていると言っても過言ではないかもしれない。そんな風に思わせた本だった。社員一人ずつが自主的に会社へ貢献できるようになるのも調査結果なのかもしれない。おいしくて安いから人が集まるのだということではなくて、このバランスなのだと思う。サイゼリヤの価格設定や立地、雰囲気は莫大な情報量の上で計算された結果であると思うと、間違えなく私は著者の手の中で動いており、そんな私を見て著者はほくそ笑んでいるんだろう。