著書名を聞いて何を想像しただろうか?これは、心理学の本でもなく、人間関係の本でもなく、自己啓発の本でもなく、ファイナンシャルプランナーのトップセールスマンが大事にしている姿勢ついて書かれている本である。人はみな承認欲求を持っている。人の所有する理解してほしい、認められたい、認めてほしい、これらの気持ちを理解し分析することでセールスにつなげていく。いわゆる「気持ち」だけでどうやって利益を得ることができるのか?この本にはそのヒントが書かれている。
著者は生命保険営業を経て、38歳の時に保険の販売代理店であるFPパートナーを創業した。FPパートナーは過酷と言われる販売代理店の業界でノルマなし・飛び込み営業なし・採用基準なしを貫いているにも関わらず、業界トップの利益をあげ続けている。なぜノルマ必須の販売代理店業界であえてノルマなしなのか?そしてなぜ成功を収めているのか?ここにはノルマありの状況が生み出す影響を逆手に取った、人間の深層心理を揺さぶる心理作戦があるのだ。会社の理念の根底にあるものは、相手の気持ちを推し量る力、共感力である。これは著者が保険営業をしていた際に疑問に感じたことから湧き上がってきたものだそう。おもしろいのは顧客に対してではなく、会社員に対して、さらには会社員同士にも求めていることだろう。人が人に寄り添われ大事に扱われる経験を経て起こる化学反応をセールスに活かしているのである。
具体的には共感力とは相手に合わせて自分をチューニングする環境適応力、対人調整力というコミュニケーション力のことだそう。この本の中にはFPパートナーで実際働いている社員の座談会も載っており、具体的にどのように横つながりを作っているのかも知ることができる。
営利を目的とする会社であっても必要なのは人が人を思いやる気持ちである。一人の従業員である前に人として大事にされれば会社に貢献したいと思うだろうし、一人一人が会社に貢献すれば会社はより発展していく。飴と鞭とはよく言ったが、もう時代錯誤なのだろう。飴と飴こそ人を成長させるそんな時代がやってきたのかも、そんなことを教えてくれる本と出会った。