東京拘置所で丸刈りになり、長野刑務所へ。独房ではウツになりかけ、介護衛生係になり、他人の下の世話をし、腎臓結石が見つかり、揚げたてメンチカツはおいしく、ジョブズ死去を独房で聞き、きな粉で難なくご飯が食べれるようになり、ついに体重は30キロ減を達成し、刑務所で40歳の誕生日を迎える。
刑務所での生活ってみなさん気になりませんか?
著者流のムショ暮らし、覗いてみませんか?
刑務所では、真面目にルールに則ってやってもトラブルは起きる。
一筋縄ではいかない「犯罪者」が相手だからだ。
かといって、手は抜けない。矛盾に満ち溢れる職場だ。
著者にとって「懲」役だと思える点はココだったそうだ。
刑務所では時間の進みが早く感じるそう。何故か?
それは、1日の密度が低いから。
平日の昼間は毎日同じ作業、夜は大した情報のインプットもないままたっぷり9〜10時間の就寝。
なんて、スカスカの人生だろう。そうか、世の”普通の大人”たちは、今の私とたいして変わらぬ状態なのか。と、著者は思ったんだとか。
否、読書や学習、筋トレもやってない人が過半なのだから、さらにスカスカなのかもしれない。そりゃ、なんにでも興味があり刺激的だった子供の頃より、月日が経つのが早く感じられるわけだ。
何事も自分の気持ち次第。ただし、ムショではどうにもならない。
刑務所内の仕事ももっとロボット化すればいいのに、と著者は思っていたそう。
これから、人間が必要とするものは精神的豊かさであり、それを推進する仕組みである。仕事はどんどんロボット化して人を減らすべきであり、余った人材はもっと人間らしい仕事に回すべきである。
生物が生きるためには、必要なくても人間が人間らしく生きるためには、これまで「無駄」とか「虚業」と呼ばれてさげすまれてきたことが重要になってくる。
著者がこの書籍を書こうと思ったのは、実態とかけ離れた刑務所のイメージをもっと多くの人たちに伝えたいという思いが強かったからだ。
世に溢れる刑務所にまつわる書籍はどうしても内容が生真面目なものが多いが、そうではなく、もっと淡々と事実を伝え、辛い部分だけでなく生きがい的な部分があるのも伝えていきたいという考えもあったそう。
なので一般の人はもちろんのこと、刑務所に入ることが決まっている人、あるいは既に服役している人、そして出所した人達にも読んでほしい。
刑務所内での生活や出所後に少しでも不安を感じている人たちにとっては、非常に有用な情報が記されている。
本書は、著者の獄中日記である。
食事内容までこと細かに記されている。
刑務所の食事は意外にもおいしそうで、興味をひかれる。そこもまた見所である。
パラパラと好きな部分だけを読んでも、端々にためになる言葉が記されている。
そしてどこまでいってもポジティブな著者にとても励まされる。
著者の他の作品とは少し系統が違うかもしれないが、本書では著者の愛らしい人間味が溢れていて、かなりおすすめだ。