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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】ゼロにリセットされるためのマイナスの世界。『刑務所なう。ホリエモンの獄中日記195日』

 

本書は、著者が2011年6月に収監された時点がスタートとなっている。
初めは東京拘置所、やがて長野刑務所へ異動となりながら、著者は獄中から手紙というアナログ手段を用いてスタッフへ日記を送り、なんとメルマガを発信し続けていた。そして、その型破りな記録を元に書籍化したのが本書だ。
一週間で一区切り。間には「時事ネタ時評」とスタッフの談話的なものを挟む。さらには時たま実録マンガも差し込まれており、巻末には、書籍、漫画、映画などに関する大量の書評も添えられている。

一時、時の人となっていたホリエモンが逮捕され、刑務所からほぼリアルタイムで日記を送ってくる。それ自体がユニークである。それが出版当時の印象であり、面白味だったのだろう。
それからざっと十年間を経た現在に於いて初めて読んでみたのだが、流石に「過去のこと」として捉えてしまう。なので、先述した様なリアルタイムの醍醐味を感じることはない。
また、受刑者には手紙を出すのにも枚数も回数も制限がある訳だが、その為に要点を抑えた簡便な記述が主だったものなので、刑務所内での出来事の詳細を知るまでにはいかない。
加えて、律儀にもというか、毎日の朝、昼、晩の飯の献立を書いているので、日記の内容は八割方が食に関するものなんじゃなかろうか。

しかし、そんな日記の日々を繰っていくと、段々と著者が変化していくのが分かる。
酒を絶った生活のおかげか、どんどんと減っていく体重。甘い物が苦手だったのが、ぜんざいやきな粉ご飯を待ち侘びる様になっていく。苦手だった納豆までもとうとう完食に至る。

また、生活態度にも変化が生じた。
収監当初の精神的に不安定な時期、他の受刑者たちとの人間関係のストレス、やがて幸せの閾値が下がっていき、遂には刑務所の中での生活が日常と化す。
そして、これまでは理解出来なかった、能力の劣る人達、出来ない者達のことを解す様にもなっていた。
1年9ヶ月に及ぶ刑務所生活は、著者に数々の新たなものを与えたのであった。

本書は、『刑務所なう。シーズン2 前歯が抜けたぜぇ。ワイルドだろぉ?の巻』が続巻として出版され、さらには、『刑務所わず。塀の中では言えないホントの話』が、出所後に出版されている。
『わず』は、『なう』に於いては検閲の為に書けなかった受刑者達の具体的な模様、刑期中に起きた出来事などの、2013年3月27日の仮釈放を経ても尚触れ得ぬものであった事柄等を、11月10日の刑期満了を迎え、晴れて書き表したものである。
どうせなら、三冊通して読むことを薦めるものである。

刑務所なう。ホリエモンの獄中日記195日
作者: 堀江 貴文
発売日:2012年5月20日
メディア:Kindle

刑務所なう。 ホリエモンの獄中日記195日 (文春e-book)