“その言葉は本当に美味しいを表現できているか”、これが本書の問いだ。テレビ番組の食レポでは一見すると、その味を上手い表現で言葉にしているように思う。“肉汁がじゅわっと出て美味しい”、“クセがなくて美味しい”、“飲みやすくて美味しい”、これらはさもその料理の美味しさを言い当てているようにも聞こえるが、実は“美味しい”理由は全く語られていないのだ。
そもそも料理の情報を伝える上で、味覚は要素の一つだ。視覚、聴覚、嗅覚、触覚情報も加えることで、より美味しさは相手に伝えることができる。ただし、それらを言葉にする際、重要なのは“共通言語”であることだ。いくら料理の味を言い当てていても、伝えたい相手がそれを表す言葉からイメージができなければ意味がない。これは国や年齢など、文化の違いによって妨げられやすい。言葉にして伝えるということは、的確に言葉にするだけではなく、相手が受け取れるかどうかまで考慮する必要があるのだ。
本書では言葉にする技術を、ソムリエの視点から丁寧に説明されている。丁寧に伝えているつもりが、実はとても失礼になっている場合があるなど、改めて言葉の難しさを知ることができる。大切な人と豊かなコミュニケーションをしたい方にはぜひオススメの一冊だ。
言葉にして伝える技術――ソムリエの表現力(祥伝社新書214)
- 作者: 田崎真也
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2010/10/01
- メディア: 新書
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