本作品は“マッハ絵本”というコンセプトのもと、企画が立ち上がりわずか三日間で完成されたものだ。絵本にはファインアートと同質の作家性が求められる節がある。現にロングセラーの中には様々な画材を使い、まるで絵画のような作品もある。絵本を愛する人であれば、セル画のような、アニメを再編集した作品には拒否反応を出すこともあるだろう。
こうあるべきという絵本の持つ古い“べき論”に対し、本作品は問いかけをする。画材の多様性など担保しなくても良し、ハイスピードでリリースしても良し、重要なことは誰かの感性に響くことであり、最低限クリアしなければいけないことは“届くこと”だ。入場禁止の美術館に飾られている絵画に価値なんか無い、作品は誰かの目に触れて初めて価値があり、それは絵本であっても同様だ。決して攻撃性を持った作品では無いが、多くの絵本の痛いところを突いたのではないかと思える。
登場人物はパンダ先輩とその後輩だ、組織の中でもがいている社会人にぜひ読んでほしい。真面目な悩みをパンダ(先輩)が真摯に受け止めてくれ、どこかほのぼのとした雰囲気を持つ作品だ。