本書はタイトル通り、無印良品の業務の仕組みを明らかにしている。軸となるものはマニュアルだ。店舗用には“MUJIGRAM”、本部用には“業務基準書”と、2種類のマニュアルが存在する。このマニュアルを徹底的に遵守することで無印良品は成果を上げている。
マニュアルと聞くと冷たい印象を覚えるだろうか。日本人にとってマニュアルは無機質で機械的で、あまり良くは映らないのかもしれない。そのようなマニュアルが存在するのも事実だろう。しかし、無印良品の持つものはそれらと一線を画する、“血の通ったマニュアル”なのだ。
ただただ志を掲げるだけでは組織は変わらない、組織を変えるためにはそこに属する人の行動を変えることが必要だ。個々の行動を変えるためには具体的な基準が必要になる、マニュアルはそのためにあるのだ。しかし社会の変化は早い、過去の常識が今の非常識になっていることが多い。その点、無印良品のマニュアルは常に成長をする。マニュアル通りに動いた結果、より良い行動基準が現場を中心に声としてあがる、その数年間2万件を超える。それらの中から吟味され、本書が例に上げた年では440件が採用される。一度作ったら終わりではない、本部と店舗、個人の実践によって常に最適解が保証されているのだ。
組織の基礎体力を向上させる際に、個人の経験則やセンスは実は阻害要因になりやすい。ましてや1人のスーパーマンが抜けた瞬間、組織のレベルは大きくダウンすることさえある。暗黙知それ自体は尊いが、これから組織に求められるものはその言語化だ。希少性や鮮度の観点から、情報価値は得た瞬間から下がっていく。価値がなくなる前に早々に共有してしまおう、そしてより価値の高い情報に塗り替えていこう。“標準なくして、改善なし”という言葉を本書から借りる、マニュアルはそのための最適なツールだ。具体的な施策も多く紹介されているので、ぜひ本書を手に取ってほしい。
- 作者: 松井忠三
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2013/07/10
- メディア: 単行本
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