認知科学者で某宗教団体に洗脳された人の洗脳を解いたことで有名な苫米地(とまべち)氏の著書です。認知科学者が洗脳という観点からみた日本の戦後史になります。GHQ(連合国総司令部)の置き土産が多すぎ、かつ、それを大事に守る日本人(自分も含む)が凄すぎだと感じました(涙)。NHK、東京地検特捜部、通商産業省(現経済産業省)、経済企画庁がGHQから派生したものだったのは驚きでした。戦後、日本がどのように変えられ洗脳されたか、知りたい方にはお勧めの一冊です。
大東亜戦争(第二次世界大戦)後の一時期の日本を占領したGHQ(連合国総司令部)ですが、一枚岩でなく、二つの派閥がありました。リベラル派のGS(民政局)と反共思想派のG2(参謀第二部)でした。本書を引用します。
【GHQには二つの派閥があったことはよく知られている。一つはGSの局長コートニー・ホイットニー准将を中心とするリベラル派。財閥解体や労働組合の組織化など社会主義的な制度を日本に持ち込んだのは彼らだ。】
【一方、GSと対立していたのがチャールズ・A.ウィロビー少将率いる参謀第二部(G2)だ。治安と諜報を担当していたこの部署は、終戦直後の数々の謀略事件に深く関わるキャノン機関などを傘下に収める部署で、リベラル派で固まっていたGSとは対照的に反共思想で固まっていた。】
そのGSがつくった組織が「経済企画庁」(2001/1/5日まで存在)です。本書には経緯がこう書かれています。
【GS(GHQの民政局)はマスコミを操り邪魔な人間を排除する経済安定本部(あんぽん)を創設、これが現在の経済企画庁である】
その後、昭和23年(1948年)に一大贈収賄事件「昭和電工事件」が発生します。そこで、GSが作った組織が東京地検特捜部です。
【GSは、自分たちの手足として動く、隠匿退蔵物資を捜査する機関の必要性を痛感し、昭電事件捜査本部を改組して警察以外の新たな捜査部を検察庁に設置する。それが、東京地検特捜部だった。】
戦後の日本は物資が不足しているせいもあり、インフレになっていました。当時は品目毎に為替レートが変わる複数レートになっており(今では想像つきませんが)、ドルの為替レートを単一にする動きがありました。そのため、インフレ経済を何とかしたく、デトロイト銀行頭取のジョセフ・M・ドッジが対応します。為替レート単一化の対応で、日本にはドッジ不況が到来します。そんなドッジの後押しによって、昭和24年(1949年)5月に民間貿易を支援するために通商産業省(現経済産業省)が発足します。本書を引用します。
【通産省はドッジにつくられたもので、その目的は“日本人が骨身を惜しまず働き、国内で耐乏生活し、輸出を高い水準で維持するよう日本政府にわらせる”ためのものであったのだ。】
話は変わって、次はNHKについてです。NHKという略称はGHQの民間情報教育局(CIE)の発案です。CIEと言えば、戦後の日本の教育改革を主導し「戦争有罪性(ウォー・ギルト)と戦争責任キャンペーン」を重視した組織です(※1)。本書にはこう書かれています。
【メディアを使ったウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムのプロデューサーを行っていた日系アメリカ人、フランク馬場がNHKの名称にゴーサインをだしていた】
ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムとは「日本人に戦争犯罪の意識を刷り込む情報宣伝」のことです。また、日本テレビにはCIAのスパイだった日本人が社長になったり、反共思想をテレビで広めたりなど、驚きを隠せません。
戦後の日本にできた組織を知ることのできる一冊です。もしかしたら、あなたが所属している組織もGHQからの置き土産かもしれません。
※1【書評】歴史の舞台裏から学ぶ大東亜戦争シリーズ7→敗戦後に洗脳された日本人『日本が二度と立ち上がれないようにアメリカが占領期に行ったこと』
https://bookrev.horiemon.com/entry/2023/08/19/220000
発行 2014/4/28
著者 苫米地 英人
出版社 ヒカルランド