主人公のなつるは、小学6年生のサッカー少年だ。まだ女子の気持ちはわからない。だから、以前、クラスのリーダー格の女子のプレゼントを拒否し、女子にシカトされてしまう。それでも、サッカーがあるから、楽しかった。しかし、そんなサッカーも、ある日、楽しくなくなってしまう。コーチが代わって、つまらなくなってしまったのだ。
そんな日の帰り道、なつるは足を怪我した子猫を拾う。しかし、母が猫アレルギーのため、家では飼えない。そんな時、引き取ってくれたのが、理生だ。理生の家には、両親がいない。弟との二人暮らしだ。理生は、いい子だった。親がいなくなっても、親を信じて家を守っていた。
夏休み、なつるはサッカーチームの合宿にどうしても行きたくなくて、サボった。新しいコーチが嫌いだったからだ。行くあてもなく、ぶらぶらしていると、公園でなつるは理生に会う。あげた子猫「とうふ」の様子を見にくるか、という理生の誘いに乗り、そこからそのまま、理生の家で理生と、弟の勇太と、3人で生活することになる。クラスメイトの誰にも言えない、秘密の生活。一緒に買い物に行き、夏祭りに行き、楽しい生活だった。そこで、なつるは、自分が理生のことが好きだということに気づく。しかし、その最後に、なつるは、理生の秘密を知ってしまい、激しく動揺する。
とにかく美しい絵、そして、それに勝るとも劣らない美しい、表現。自分にできることがあるかなんてわからない、それでも、相手のためになりたいという気持ち。相手を思いやるということ。守りたい、それでもどうしていいかわからない。子供ゆえに、不器用だが、それでもなんとかしよう、という気持ちが伝わってきて、一層美しい物語になっている。壊れそうな美しさに触れたい方に、ぜひオススメしたい一冊です。