世の中にはお金で買えないものはない。
これは、冗談ではなく海外を中心に、今やほとんどのものが売りに出されている現状があります。
本書で挙げられている例としては
・絶滅の危機に瀕したクロサイを撃つ権利
・議会の公聴会に出席したいロビイストの代わりに徹夜で行列に並ぶいわゆる「並び屋」
・病人や高齢者や生命保険を買い取り代わりに保険料を払い死亡したときに給付金を受け取るビジネス
など、日本人なら驚くようなものまで‥。
この30年の間に市場と市場価値が、それらがなじまない生活領域へと拡大しており、著者はこの現象に対して警笛を発しています。
その理由は2つあり、1つは不平等にかかわるもの、もう1つは腐敗にかかわるものを挙げています。
結論としては、お金で買うことが許されるものかそうでないかを決めるには、社会・市民生活の様々な領域を律すべき価値は何かを決めなくてはならないということ。
そして、その価値の測り方は問題ごとに異なっていくため、個別具体的に見る必要があるということを述べています。
この問題を、行列に割り込むこと、インセンティブ、生死を扱う市場、命名権という項目を設け、膨大な具体例を挙げながらそれぞれ考察しています。
最初の行列に並ぶという事例で言えば、議会の傍聴券の行列代行があると、議会に参加する権利を売り物にすることで、それを卑しめ、侮辱する行為になり得るということを書いています。
また、公演でもアーティストによる有料のコンサートと市が開催する無料の公共公演では、意味合いが変わってくるということも比較しながら書いています。
市場と道徳というと、2008年の金融危機を思い出します。でも、実際には、もっと身近なところでも起こり得る問題なんだなと感じました。
日本人は真面目だから、こんな海外にあるようなビジネスはあり得ない。そう考える人もいるかもしれません。
でも例えば、日本でもSNSでの炎上事件が話題になることがあり、他人事ではないと思います。
ビジネスの倫理について考える機会ってあまりないし、そういう分野について書かれた本はあまり見ない気がするので、興味持った方はぜひ読んでみて下さい。