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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】「あなたの命を何に使うか」『世界一過酷な場所で見つけた命の次に大事なこと』

スーダンダルフール地方、シリア、バングラディッシュなどの人道援助の最前線の常に危険と隣り合わせの環境で、幾度となく修羅場を乗り越えてきた著者が自身の経験をもとに読者に命の使い方について問いかける。

普段の生活の中で世界の様々な情勢を目にする機会があるが、それらの報道を目にしてもその時だけ多少の感情を抱いてもどこか他人事のように感じられ、そこから具体的なアクションを起こしたことがあるという人はそう多くはないと推察する。
自分も行動できているかといえば、そうとは言えない。
日本に生まれた我々は、日々の生活で命の危険を感じることは少ない。しかし世界に目を向けると、衣食住もままならず、命の危険にさらされている人たちがいるのも事実だ。そういった人々に何かできるとことはないだろうか。まずは、そういう事実に関心を持つということが第一歩になるのではないかと思う。

著者は初めは国境なき医師団の活動に一生を捧げるとは考えていなかったが、どのような経緯を経て、同団体の日本事務局長になるに至ったのか。

1章では、著者が国境なき医師団の現場で経験した世界の現実とそこで生活する人々について語られている。
2章では、ハーバードの教授からの不思議な問いかけをきっかけに、セルフとアイデンティティについて、筆者の考えが説明されている。
ここで印象的だったのは、イラクで著者が体験した、イスラムシーア派の最高権威との面会のエピソードで、過去の日本人が築いてきたもの=今自分たちが我々の先祖から知らず知らずのうちに受け取っている贈り物や自分たちが後世に引き継いでいくものについても考えさせられた。
そして、このエピソードをきっかけに、世界の人に対して日本のことを語る際に、日本人として身に着けておくべき教養の一つであると感じ、『武士道』新渡戸稲造著を読み始めた。

3章以降では、夢に向かって歩みを進めるためのマインドセットや戦略などについて著者の考え方が紹介されている。その中で、日本の若者たちへのメッセージとして、「日本のような国にいて、夢を持たないのはモッタイナイ」という。

そして最終章では、読者に対してこの世に生を受けた我々がどのように命を使うか、命の使い方に関して問いかけられている。なかでも著者がハーバードケネディースクールの修了式で学長から伝えられた以下のメッセージが印象的だった。
「君たちの全員が大統領や総理大臣になれるわけではない。それでも、君たち全員が世界をよくすることはできる。それは、自分自身が決めた自分の持ち場を少しでも改善すること。そしてその少しの改善を積み重ね続けること。それが世界をよくする唯一の方法である。諸君、健闘を祈るー」

当たり前のことではあるが、当たり前のことをコツコツと積み重ねることでしか、大きな目標にはたどり着けないんだなと改めて感じた。
明確な目標が無かったり、見失っている人、このままでよいのか迷っている人、大きな目標を前にどうしたらよいかわからなくなっている人などの背中を押してくれるような一冊なのではないかと思います。

著者:村田 慎二郎
発行所:株式会社サンマーク出版