精神を病んで自殺を図り、脳死状態となったノンフィクション作家柳田邦男の次男との11日間の葛藤、迷い、未来について書かれた本著。泣かせる本ではない。生き続けることの意味を我々に問いかける本である。
父が紡いだというよりはさすがノンフィクション作家柳田邦男が紡いだ言葉の数々でできている。それでも本著を書くまでは時間を要したと書かれている。
本全体を通じて、長く精神を病んでいた次男を気づいてあげられなかったという後悔が滲み出ている。長い間次男と会話を繰り返し、自殺の数時間前まで次男と話していた著者にとって、今目の前にいる脳死と判定された鼓動を強く打っている次男に何をしてあげられるのか?11日間は著者にとって答えを返さない相手への質問の連続であったように思われる。
次男との別れを経験し、日本の脳死判定について読者へメッセージが込められている。「脳死は死である」は簡単に決められるものではない。著者は日本の特徴として非個人主義的家族愛と表現し、残された家族が本人の代わりに決めることは容易なことではないと述べている。同意する。だからこそ死について日頃から親しい人たちと話すことでQuality of deathが実現でき、それはつまりその人の生き様になるのだ。
次男は腎移植のドナーになるのだが、その際に長男が医師へ伝えているメッセージがなんとも言えない感情を我々に残していく。誰かの命を繋げたいというドナーの感情をレシピエントへ伝えられるのは医師だけである。それゆえのメッセージである。気になる方はぜひ本著を手に取って欲しい。
ーいのち、永遠にしてー