著者はイギリス、アメリカに留学したあと、面白い写真を撮るために世界を放浪したバックパッカー。
アジアは勿論、アフリカ、中南米の危険地帯を訪れ、自身の体験を旅行記にまとめることを30年続けている。
今回、作者が挑んだ国はインド。
過去に2度訪れているが、前回の訪問から13年経過していることに加え経済成長したインドの現状を見ておきたかったからだ。
現地での移動手段は、「時刻表通りに運行されない」と悪評の高いインド鉄道。
最上級のA1クラスから最下位のジェネラルクラスまで7段階の車両の違い、トイレの実態、乗客の様子を面白おかしく伝えている。
インドを訪れたことがある方なら分かると思うが、観光地に降り立った瞬間にガイド、ドライバーを名乗る詐欺師達が外国人からかすみをとろうと群がってくる。
彼らは、平気で嘘をつくばかりか、自分が悪くても謝らない。確率は低いがレイプや殺人を犯す者も交じっている。旅行者は、旅を続けるために彼らの力を借りる必要に迫られることがある。
百戦錬磨の作家が、彼らの行動を先読みしながら危険回避する行動がとっても勉強になる。それでも、入れ違いで同行する友人達が事件に巻き込まれて対処することになるのだが。
経済力を持つ日本人は、貧乏旅行することを好まない傾向が強い。
忙しい日常から解放された貴重な休暇中に煩わしいことに巻き込まれ時間を奪われるならお金を払って有意義な時間にする方がコスパが高いからである。
また、50歳を過ぎれば健康面の心配がでてくるため、体調を維持するため、何かあっても対処してもらえるパック旅行や現地アテンダーの力を借りる。
経験豊富な作者は、出国前に情報をしっかりと集めたあと、ホテルやレストランスタッフ、他の旅行者から現地情報を追加しながら用心深く旅を進める。
消灯後の寝台列車内で入れ替わる乗客がいれば目を覚まして荷物に気を配るばかりか、新たらしく同室となった人物をカーテン越しから察して危険要素がないか判断する。
やり過ぎなぐらい危険回避行動をとっている。
コロナ騒動が過ぎたあと、激増するインバウンドに注目が集まっているが、海外に出かける日本人は月100万人弱いる。
訪問国により危険度は異なるが、日本と勝手が異なることを認識して行動しないと事件に巻き込まれることになる。
海外に行く予定のある人は、久しぶりの感覚を思い出すためにも一読しておくことをお勧めする。
『インド超特急!カオス行き』
作 者:嵐よういち
発売日:2023年12月13日
メディア:産業編集センター