HIU公式書評Blog

HIU公式書評ブログ

堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

MENU

【書評】実スパイシリーズ5、戦争前にスパイ工作に気付いた外交官、若杉要(わかすぎかなめ)。どんなスパイがいるの?『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』

 某スパイマンガ・アニメのように、スパイ工作なんて、自国、敵国共にやりあっているので、いかに相手に気付かれずに隠密行動をとれるか、または、以下に相手のスパイ工作に気付けるかが肝心になってくる。だから、情報収集というのは欠かせない。第二次世界大戦(大東亜戦争)の前、アメリカでの共産党野動きを察知し、スパイ工作を予期した外交官がいた。それが、若杉要(わかすぎかなめ)だ。この優秀な日本人外交官がいかにしてスパイ工作に気付いたのか?また、スパイの情報収集のうち4種類を紹介したいと思う。さて、どうやって情報を集めるのだろうか?

スパイの情報収集の方法と、それによって入手する情報で分類されている。本書を引用すると、
【・シギント―相手の通信を傍受して収集される通信情報。
ヒューミント―情報関係者が聞き込みや情報 提供者を通じて集める情報。
・イミント―航空機や偵察衛星などによって集められる画像を分析することで得る情報。
・オシント―新聞やインターネットなどで公開されている情報。】
通信の傍受、人を利用した情報収集、写真などの画像からの分析情報、公開情報など情報を得る手段は様々だ。得たい情報によって手段を使いこなし、敵国に気づかれないようにすることが重要である。会社情報や技術情報で自分が利用されないことに気を付けなければならない。

さて、若杉要(わかすぎかなめ)はどうやってこのようなスパイ活動に気付いたのか。若杉は1937年(昭和12年)の4月にニューヨーク在勤で専任総領事に就いている。そこで、ニューヨークに共産党本部があり、反日宣伝活動も盛んになり、米国共産党の調査を行っていた。ニューヨークがそういう空気になっていたのだと推測できる。そして、若杉の率いるニューヨーク総領事は「米国共産党調書」を発行している。もちろん、当時の近衛内閣に対しても進言している。本書には
【若杉はこう述べて、近衛内閣に対して、「ルーズヴェルト政権の反日政策の背後には米国共産党がいる」ことを強調し、ソ連コミンテルンと米国共産党による日米分断策動に乗らないよう訴えたのだ。】
しかし、近衛内閣は遠いニューヨークの若杉の進言よりも、近くに居たソ連のスパイに乗ってしまったのだ(※1)。「遠くの親戚より近くの他人」というのが身に染みる。いかに優秀な部下がいても、リーダーが適切な判断をできなければ意味がない。自分も情報を適切に判断できるように情報リテラシーを身に付けよう。
スパイのこと、第二次世界大戦(大東亜戦争)のこと、日本のことなどについて知りたい方は是非ご一読ください。
(※1:近衛内閣の話は下記リンクの書評にてご覧ください)
https://bookrev.horiemon.com/entry/2023/06/24/220000

発行  2020/3/26
著者  江崎道朗(えざき みちお)
出版社 扶桑社