太平洋戦争で日本と戦うことになった米国は、当時の戦時情報局によって日本研究を実施。日本人の行動・歴史・文化の分析からその背後にある独特な思考や気質の解明を試み、その特徴を菊と刀であると考察しました。
この2つに集約された根本的な部分は「恩や恥」という概念です。日本人なら馴染みのある言葉で普段から大切にしている事柄だと思いますが、この概念が当時の米国には無く、人から借りた借金に例えて説明しています。
一方で歴史や文化の視点からは、子どもへの教育方針であるアメとムチ、士農工商による階級社会、武士の鍛錬に目を付け、これらの特徴から菊=自由を規制・統制する、刀=己の自己研鑽という定義しました。 米国では自由と平等を重んじているので、当時の米国にとって日本人は全く違う人種に映りました。
なお、この研究に大きく寄与したのが当時米国在住の日本人であることにも驚きましたが、世界から見た日本人像の貴重な研究書だと思いますので、興味のある方は是非読んでみてください。
ルース・ベネディクト (著), 長谷川 松治 (翻訳)
2005年
講談社学術文庫