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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】素材の沼へようこそ!『世界史を変えた新素材』

 

みなさん。人類が発展してきた背景には偉人の他にも多くの素材、材料が鍵になってきたことをご存知でしょうか?
変化の激しい時代では何がきっかけで世の中が大きく変わるかわからない。歴史の中から何かヒントを!というのを素材という観点から深掘りされていました。
知っている様で知らなかった素材の歴史について作者独自の目線も交えながらまとめてくれており、ワクワクしながら素材について知ることができるそんな一冊でした。

【身近で強い素材セルロース
セルロースでまず思いつくのは「紙」。最古の紙を調べると諸説あるみたいだが、身近な材料から紙を低コストで創り上げたのが蔡倫という人がはじめらしい。具体的には麻のボロ布と灰を一緒に煮込んで紙を作ったらしい(現代化学ではアルカリ処理という)。かれこれ2000年前のお話らしいが今も製造法の基礎となる部分は変わってないというのだからまさに大発明。
最も人類の歴史を支えてきたと言っても過言ではない材料の一つは紙であり、素材としてみるならセルロースと言えるのではないだろうか。1つの素材が歴史を支えていた事実、また一つ新しい知識を得て知的欲求が満たされた。笑

【著書の面白い視点】
お話が素材と歴史の関連で終わればただの雑学だが著者は化学的な視点にさらに踏み込んで解説してくれるから化学大好き人間の私にとっては非常にありがたく面白いと思うポイントだ。
紙の話に戻るが紙が保存用の媒体として2000年も使用されてきた理由の一つには素材自身のタフさがある。原理を本当にざっくり説明すると分子という構造の中に弱い磁石のNSの様なものがたくさん付いており(正確には異なるのだが)お互いを各所でホールドするため構造が壊れにくい。壊れにくい構造が寄り集まっているから全体として強いよねっていう原理。
ただそんな強い素材の紙だが電子化(ペーパーレス)の流れで使用量は減るいっぽう。ただ出番がなくなるかと言ったらそうじゃないらしい。この強靭さともう一つの特徴の軽さ生かしてプラスチックと混ぜて軽くて強靭な新素材に変わっていくんだとか!?
変わらないことで長く歴史を支えてきたこの紙(セルロース)がどう時代の流れで変わっていくのか目が離せない。
(私の調べではセルロースを含んだ素材で車が作られたとか???)

【書きやすめ】
これ以上は話がマニアックになるから興味がある方はぜひ手にとって読んでみて欲しい。化学を受験だなんだで勉強しなかった人でも手軽に化学を知れるし、なんだ面白いじゃんと興味を持たせてくれる。これも著者の良さでもあり、伝え方のうまさ、凄さだと私は思う。

また著者の作品が個人的に好きということもあり、前書きもいつも楽しみに見ている。「新材料が歴史を動かす」化学者をしているとそんなことが自分の発明で実現できたらといつも夢見ている。
歴史の本が偉人にフォーカスされることが多い中材料に着目して描かれているというだけで私はワクワクが止まらなかった。あっという間に読み切らせてしまうところに筆者の凄みを感じるとともに尊敬を抱いている。

【最後に】
素材、材料、化学って意外と面白い!と改めて思えるそんな一冊でした。素材を知るとものの見え方が変わる。この変わる楽しさを一人で楽しむのも良いが一緒に沼にハマってくれる人が一人でも生まれたら良いなと思う。素材について熱く語ろう!