身体を使うのはスポーツや武道のような運動のときだけではない。日常のすべての活動において、私達は身体を使っている。そんな日常での身体の使い方について、本書では語られている。
スポーツの本というとどうしても専門的になりすぎて理解できないことがあるが、本書はもっと初歩的なところ、身体の動きに焦点を当てている。普段はあまりスポーツをせず身体について詳しくない人にこそ読んでほしい。
身体の動きの中で、脱力というのがある。勘違いしている人が多いのだが、脱力とは単に身体の力を抜くのではなく、力を入れる部分と抜く部分を使い分けるということだそう。例えばタイピングをしているとき。手や指に力を入れて作業していると、気づけば肩が凝ってしまうことがある。これは無意識のうちに手と肩の両方に力を入れてしまっていることが原因だ。しかし、単に肩の力を抜いて作業しようという意識だけではこの問題は改善できない。こういった人は、肩の力を抜くと手の力も抜けるといったように、肩と手の動きが連動してしまっているからだ。まずは、肩と手を切り分け、手の緊張と肩の脱力というものを身体の感覚として分けて使えるようにしていくことが大事だそうだ。これが脱力できた状態である。
この説明、私は腑に落ちた。この腑に落ちるという状態は頭を通り越して内臓である腑に落ちるということらしい。頭だけでは理解できない。身体で理解することで、「身につく」という状態になれるのだそう。
肩に力を入れると、手の力も入ってしまう。お腹には力が入れられるが、耳には力が入れられない。このように自分の身体でも意外とコントロールできないことが多い。まずはこういったコントロールできないことがあることを知るということ。それが、身体を上手に使うための第一歩である。