「デリーからロンドンまで乗り合いのバスで行く」主人公"私"の旅、全6巻の5巻目。アジアからいよいよヨーロッパへ。トルコからギリシャ、そしてイタリアへ向かい旅の終わり方を考え始める"私"へ空虚にして不安にさせる喪失感が襲いかかる。
香港から続けてきたひとり旅も、いよいよアジアとヨーロッパの分岐点となるトルコへ。僕が好きなシーンはトルコとギリシャの国境でのシーンだ。国境を越えるシーンはたくさんあり、僕が国境を越える度に感じてた緊張感や入国スタンプを押してもらった時の達成感を思い出すことができるから全シーン好きである。しかし、トルコからギリシャに向かうシーンが一番興味深かった。
国境までのタクシードライバーとの交渉、国境に架かる長い橋の中央にある検問所の係員とのやりとりや、若者たちの一団との移動など、人との出会いや会話が多く、前巻までと同様に、まるで自分が国境越えをしているような気分になる。
本巻の最後を飾るパトラスでのエピソード、道ですれ違った現地の青年から見ず知らずの家の誕生会に招待され、退屈そうにしている子供のために"私"が始めた紙ヒコーキ遊びはやがて全員が興じ、その後、家に泊めてもらうシーンは心が温かくなる。"この一夜が旅の神様が与えてくれた最後の贈り物なのかもしれないな"と”私”は旅の終わりが近づいていることを感じてきている。
いったいどのように、この旅を終わらせるのか?最終巻が楽しみであるし寂しくもある。