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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】世に生を得るは、事をなすにあり。『竜馬がゆく』

 

明治維新の立役者としての坂本龍馬の生涯を描く、超有名な時代小説。
作者の司馬遼太郎の特性として、主人公には颯爽として曇りのない晴れやかな人物像を求めるので、本書の主人公である龍馬も、実に男っぷりが良い。
一節では、坂本龍馬が偉いのではなくて、司馬遼太郎が達者なのだと言う者もいるそうだ。
最近では、龍馬はイギリス人の手先だったとかなんとか言うセミナーなんかもあったりして、以前ほどではないのかもしれないが、それでも坂本龍馬に魅力を感じたり憧れを抱く人は未だ多いであろう。
そして、なんとなくベンチャー企業家に好まれる傾向があることも知ってはいたので、私もどういうことでそうなの? と思い、読んだことがある。
全八巻を一気に読んだが、第二巻目くらいから段々と面白くなってくる。そして、時代の狭間で成長をしていく龍馬は、第四巻辺りから少しずつ含蓄のある言葉を吐いてくる。

本書を読んだ当時の私は、或るビジネス団体の運営事務局長を始めて暫く経った頃であった。
まだまだ会を構成する会員数は少なかったが、中小企業の経営者を集い、アジア全体の英知、衆智を集め、経営者から政治に物申す様にまでしていこうと理想を掲げ活動をしていた。
だから、
“実力をやしなうことだ。その上で倒幕の発言であり、倒幕の実行である。それにはまわりくどいようだが艦隊をつくる以外に手がない”
とか、
“ところが竜馬は、利害問題から入ってゆく。薩長の実情をよく見、犬と猿にしてもどこかで利害の一致するところはないか、と見た。それが、兵器購入の一件である。長州もよろこび、薩摩も痛痒を感じない。そこからまず糸を結ばせた、というのは、中岡などが経てきた志士的論理からはおよそ思いもよらぬ着想だった。
「志操さえ高ければ、商人のまねをしてもかまわない。むしろ地球を動かしているのは思想ではなくて経済だ」”
などという文面には、なるほどねぇと唸ったものだった。

”「代々、百石、二百石などという厚禄に飽いた者とは、共に事を談ずることはできない。先祖代々餌で飼われてきた籠の鳥になにができるか」”
”「先人の真似ごとはくだらぬと思っているな。釈迦や孔子も、人真似でない生きかたをしたから、あれはあれでえらいのだろう」”
この様な科白も、世を変える人物となってやろうと意気込むベンチャー企業家にとって、思わず膝を叩かずにはいられないところなのであろう。

”竜馬は、日中、町をいそぎ足であるいてゆく。そのとき瞬間も死を思わない。
「そのように自分を躾けている」”


新装版 竜馬がゆく
作者:司馬 遼太郎
発売日:1998年9月10日
メディア:文庫本