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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】忘れるなよ。俺は気どっているんだ。『ハード・オン』

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作は矢作俊彦。画は平野仁が担当。クセはあるが魅力的な画風のマンガ家だ。
矢作氏が大好きな、日活無国籍アクション映画のムードたっぷりで、キザで感傷的なこの話の主人公はヤクザ。渡哲也がモデルであるのは間違いない。
舞台は横浜で始まるが、罠にはめられ逃亡し、始まって早々に舞台は海外へ移動する。
横浜を後にした主人公 志垣晧平は言う。
「女と国を失くして、あれだけせいせいしたんだ。手前まで失くなったらよほど爽快だろう」

やり直しを図るタイに於いて、或る組織に非道く個人的なモチーフから仲間に誘われ、ニューハーフで凄腕の謎の美少年Jと相棒を組み、CIA、KGB、中国の某組織らと渡り合いながら、麻薬を抱えてマレイ半島に向かう列車の旅につく。
それは4ビートな感傷的な理由からなのか、単なる気まぐれか。
そして、その旅を志垣晧平は強引な”自己流”で終わらせてしまう。

成り行きでシンガポールに舞台を変え、そこでようやく落ち着きを見せるが、「やはり野に置けヤクザ者」。酒場の主人 アイリーンを加えたJとのトリオには、トラブルは自ずと勝手にやってくるのだ。
そして、シンガポール編からレギュラーに加わった、敵だか味方だかハッキリとしない日本からの出向ヤクザ 平田は宍戸錠を彷彿とさせ、こいつも面白い男だ。

随所に気どったセリフが登場することもそうだが、舞台設定も極めて珍しい本作。これが実写だったらさぞかしキツイだろう。マンガだったからこそ成り立っていると思える独特の作品だ。
時期的には、以前の書評にも書いた『気分はもう戦争』と同じような頃の作品だったと思う。
かなり古い作品だが、見かけたら必読をオススメする。

「ゲーム・セット」
「ノー・サイドって言ってくれ」