1日たったの5分。本書を読むことにより、教養が身につく。本書が読み終わる1年後には、自分が暮らす世界の見方が変わってくるそうだ。
今回とりあげる華道とは、生け花とも呼ばれ、季節の草花や木の枝を使い、その美しさを表現したり、観賞する芸術である。
元々は、仏前や床の間に飾るところから始まったが、池坊専慶氏により観賞するものへと変化し、池坊という流派の一つとなった。
評者も生け花を始めた当初は、池坊から入り、枝葉に塗装をしたり、ビスで打ち付けたり、創作性の高いアーテイスティックな手法を取り入れた草月という流派へと移行した。
そこでは、単に生け花の基本の型を学ぶだけではなく、師匠でもある主宰者と共に、生け花というイメージにとらわれない様々な仕事の経験をした。
例えば、ホテルのパーティ会場やエントランスの装花から、テレビ番組でのパフォーマンスやセットの設営、百貨店のショーウィンドウ製作、また海外ではローマ国際映画祭や、パリ市庁主催イベント等を手伝いながら多くの事を学ぶことができた。
本書にもあるように、華道は「師匠から弟子へと厳しい稽古のもとに技術と伝統が受け継がれていく」とあるが、正にその通り。穏やかな雰囲気で上品に学ぶことは、ほとんどない。
短時間で創作したい作品をイメージし、それにあう花材と花器を選択し、完成させ、主宰者のチェックを受ける。
一作品を数分で完成させることは当たり前。そこで時間がかかるものなら、皆の前で罵声をあびることになる。
また現場での作業は、大工仕事そのもので、時間が迫った緊迫感の中では、怒号や刃物が飛び交うことは日常茶飯事であった。
現在は、主宰者の都合により現場から離れたが、その経験が様々な場所で活かされている。華道はかつて、戦国時代の中、池坊専好氏により、豊臣秀吉氏と刀を使わない戦に使われたという逸話も残されている。花は、人に大きな影響を与える力を持っているのだ。