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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】契約内容はしっかり確認しよう 『正直不動産』

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不動産会社で営業をしている永瀬。老夫婦のアパート建て替えの契約では言葉巧みに誘導し、素人が読み取れないレベルの条項を契約書に盛り込む。「不動産営業は嘘ついてナンボのイカレた世界」。そんな言葉も発しては勢いづいていた永瀬だったが、とある石碑を壊してからは祟りなのか、なんと嘘をつけなくなってしまう。嘘で営業成績を上げてきた男が、正直に不動産営業をするようになってどうなるのか。乞うご期待!

本作品には不動産に関する多くの専門用語が登場し、商談や契約の状況も描かれている。正直に不動産営業をするようになった永瀬が、嘘をついている他の営業マンから顧客を救うというストーリーが多いが、裏を返せば契約を交わす顧客達ももっと注意をして契約する必要があることを示している。これは私自身も注意しなければいけないなと思わされた。不動産というものは基本的には大きな額の契約であり、普通の人にとっては非日常。非日常なので、専門家や慣れている人に任せれば安心だろうと、ついつい考えがちだ。時折ニュースで流れるような不動産に関する事件を対岸の火事と思うことなく、契約時には注意すべき。

面白いところは、永瀬が不動産営業で嘘をつけないだけでなく日常的にも嘘をつけないことだ。例えば、子どもに向かって「サンタクロースなんて本当はいないんだよ」と言ってしまう。また、女性に対しても思っていることをオブラートに包まずに言ってしまい激高される。そんなことばかり言って本当に大丈夫なの?と思うが、正直で本音を言う永瀬の人間関係や恋模様が最終的にどうなっていくのか、それも密かな見所だ。

原案は詐欺師を喰らう『クロサギ』の原案でも有名な夏原武氏。『クロサギ』ではあらゆる詐欺の巧妙な仕組みが解説されていたが、本作品は不動産にギュギュっと特化している。不動産でもこんなにもいろいろなケースや問題があるのかということが分かるし、買い手・売り手・仲介業者など様々な立場からの見え方も感じられる。不動産に興味がある人、騙されたくない人、本音で生きてみたい人にオススメだ。