本書は元派遣職員の新米社会保険労務士ヒナコが、勤務している社会保険労務士事務所の取引先企業で生じている労務問題の解決に立ち向かう姿を描いた短編小説集である。
社会保険労務士とは、採用や退職までの労働・社会保険の相談に応じたりする総務関係部署の業務を支援する、いわば労働のスペシャリストである。だが、ヒナコは専門家としてただ労務関係の知識を伝えていくだけではない。時には反発されながらも、雇用者にも労働者にも寄り添うために奮闘する。まっすぐひたむきな姿はつい頑張れ、と背中を押したくなるようなキャラクターだ。彼女の数年後の成長した姿を描いた続編があれば是非見てみたいと感じた。
本書ではパワハラ、産休・育休、残業代、みなし労働、労災、ブラックバイトといった現代に即した題材を取り扱っており、専門書を読むのはハードルが高いと思っている人にも気軽に読める内容である。社会保険労務士の仕事内容を知りたい人、人事・総務関係の仕事に従事する人、そして労務関係の知識を高めたいと感じている人におすすめしたい。