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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】100年前のユーラシア大陸横断旅行『明治の建築家 伊藤忠太 オスマン帝国をゆく』

築地本願寺湯島聖堂を設計した建築家、伊藤忠太が3年かけて日本建築のルーツを探る旅に出ます。筆まめだった忠太が記した100冊にもなる手帳を元に現在トルコの大学で教鞭をとる著者がトルコの文献と照らし合わせて解説します。建築意匠の細かい洞察から現地の様子、渡航中の生活費まで細かく書かれていて興味深い作品です。

当時アジア建築の学術書がなく、アジア建築は西洋建築より劣ると記された西洋文献に忠太は憤慨し、旅に出る決意をします。留学といえばドイツやイギリスだった当時、アジアへの渡航を国費で行くため奔走する所から始まり、行く先々で語学を習得し、柔軟に旅を続けます。探究心と情熱がパイオニアを作り出すのだなと読んでいてわくわくします。

絵が得意だった忠太の挿絵は、トルコの温泉で妖怪と混浴したり日本刀でノミと格闘する姿など、微笑ましいものばかり。日露戦争中も旅を続け、かなり好奇な目で見られたようですが、それも面白がっている様子が伝わります。その人柄にたくさんの人が国籍問わず彼の旅に協力します。

旅好き、歴史好きな人におすすめです。築地本願寺は変わった風貌だなと思っていた人もその謎が解けるでしょう。この本を読んでから行ってみるとまた違った趣を感じられるかもしれません。

明治の建築家 伊東忠太 オスマン帝国をゆく

明治の建築家 伊東忠太 オスマン帝国をゆく