ユーラシア大陸最西端を目指す筆者クロサワコウタロウが描くほぼノンフィクションの二巻目はなかなか身近に感じられない普段着のイスラム世界が覗ける。
国道以外はパキスタンの法律が及ばないテロ組織や反政府武装勢力が潜むトライバルエリアを恐れながらも大胆に走り抜いた著者は、アフガニスタンの国境と並行するバロチスタン砂漠を抜けてイラン、そしてトルコへと向かう。
筆者が旅をしていた1999年頃は、ちょうど私が海外旅行の楽しさに目覚めた年。その年に護衛のための銃も普通にバザールで売られているアフガニスタン国境近くのパキスタン州都クエッタや隣国でのビザ取得が困難な閉ざされた国イランを、途中で出会ったイタリア人ノッチとドイツ人シルビアで日独伊三国同盟を結成し、道中を野宿しながらバイクで駆け抜けていたなんて、無鉄砲ながらも果敢な姿に尊敬の念さえも覚えた。
素人目線での少し言葉足らずな文章が、自分がバイクにまたがって旅をしているような、イスラムの文化・習慣や食生活が何となく理解できたような気分にさせるのが不思議。
国境を越える旅ができない今だからこそオススメしたい。