本書は「鬼」について物語や絵巻、図を使って詳細に解説されている。鬼とはどのようなものなのか、化け物や妖怪との違いや関係性、妖怪の出現しやすい場所や鬼のエピソードが多く残るエリアについても書かれている。また、様々な鬼の種類や日本人との関係性について、文学、芸能、絵画また日常から調べ、分析している。
鬼には長い歴史があり、古くは『日本書紀』や『風土記』に登場しているが、現在までに鬼の姿や意味合いは、多様化している。しかし「鬼=恐ろしいもの」の象徴であることにかわりはない。
一般的に思い浮かぶ鬼の例としては、「節分」の鬼や秋田県男鹿半島の「なまはげ」さらには『桃太郎』や『一寸法師』など昔話に登場する鬼など様々である。
また日本人にとっては、自分達と異なる人、異民族、自分達に従わない人までも「鬼」と定義していたそうだ。その反面「人間に慈悲深い鬼」、「こきつかわれる鬼」、「愚かで、か弱い鬼」も存在するという面白さもある。また、人間に福をもたらす鬼もいるという。このように鬼とは複雑なものでもある。
著者は文化人類学者、民俗学者として妖怪研究の第一人者といわれている。また、その功績がたたえられ2013年に紫綬褒章を受章した。その際に著者は「妖怪研究は人間研究なんです」と語っている。
なぜなら人間は妖怪等「見えないもの」を探し求め、関心を持っている。そこには、民俗学的な背景があり、それらを通じて人間の姿を探るのだという。
鬼や妖怪などの「異界のもの」は様々な境界に現れる。境界とは「自分達の慣れ親しんでいる世界との限界」であり、人は色々な所にそれを作っている。そして、その限界の向こう側(知らない世界)に「怖さ」を感じ、そこにいる知らない存在を「妖怪」と呼ぶ。それは、人間の持っている「恐怖心」を「妖怪」という存在としてあらわしているのだ。
また、その「境界」は空間のみにとどまらず時間的にも存在する。一年を春夏秋冬に分け、そこには「時間の裂け目」ができ、そこから「異界のもの」が出てくるという。つまり、季節の分かれ目「節分」に鬼が出るということなのだ。
節分の日の週末、2/2と2/3に六本木で節分まつりが行われる。約2トンの豆を使った「豆まき」では、子供の頃に経験した比ではない体験ができるだろう。また誰でも気軽に参加できるため、自分の限界を超えて異界のもの「鬼」に遭遇するチャンスでもあるのだ。
詳細については、こちらから
https://expo.horiemon.com/
- 作者: 小松和彦
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/07/24
- メディア: 文庫
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