本書の1ページ目は福沢諭吉をバックにして「私はお金が大好きです。」という一言から始まります。次のページには「今の私のセリフを聞いて顔をしかめたあなたは、お金のことを何も知らないのでしょう。」と書かれています。
世界各国の「個人金融資産」、「年間寄付額の比較」などのデータをもとに日本人を捉えていくと、「現金・預金が大好きで、寄付はしない」、投資信託の平均保有年数はたったの2,4年(海外の平均保有年数は10~20、30年)、自分のお金が減ることが怖くてしょうがなく、その危険性を嗅ぎ付けるとすぐ売ってしまう。投資先の人間を信じることもできず、唯一信じられるのはお金だけ。それが日本人の特徴です。
そんな盲目的にお金を失うことを拒否した人たちが求めたのは「過剰な安さ」でした。激安の深夜高速バスでの交通事故など、一斉に「ブラックだ!」と叩きましたが、そもそもなぜそのような過剰なサービスが生まれたのでしょうか。それは私たちが求めたからです。その“ブラックな需要”に対して“供給”しようとすれば当然“ブラック”になってしまいます。
以前、私は鎌倉投信株式会社取締役の新井和宏氏の著書の書評をあげました。その著書には「無理な値下げ競争は必ずどこかにしわ寄せがきてしまう。」と書かれており、落合陽一氏の10年後の仕事図鑑では「仕事とは社会からの必要によって生まれる。」と書いてありました。現在、企業価値が高まっているのはデフレ経済にて年収300万以下の層が増え、彼らに満足を与えるサービスを供給している企業です。メルカリもファーストリテイリングもそうではないでしょうか。
結論、私たちはお金持ちになる必要があります。そして、健全な消費者として社会に参加し、未来を明るくする企業にお金を回しましょう。決して、ブラック企業に拍車をかけるようなことはやめましょう。私たちが「過剰な安さ」を求める限り誰かにしわ寄せがいきます。
世の中は私たちが使ったお金で出来ています。私たちの消費活動は選択することができて、実は社会を創っていることにつながっているのです。本書にて経済と自分達の関わりに気付けます。ぜひ一読を。
- 作者: 藤野英人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/02/26
- メディア: 新書
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