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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】プロの仕事とは。『わが青春のマジックミラー号 AVに革命を起こした男』

皆さんはマジックミラー号をご存知だろうか。中から外は見えるが外から中の様子は見えない、マジックミラーを実装した車両だ。単刀直入に言えばAVの企画物だ。近くを通りがかる一般女子に声をかけ、同意の元車内に入ってもらい、金額レベルに応じた脱衣や行為をお願いする。車の機動力を最大限活かし、マジックミラー号は全国を駆け巡る。また、声をかけるターゲット属性も様々だ。仕事中のキャリアウーマン、女子大生や就活生、街に遊びにきている女の子二人組など多様だ。プロの完成された演技とは違った生々しさをおぼえる。本書はこの企画を生み出した久保直樹の、映像作品に携わる職業人としての人生が描かれた自伝でもあり、同時にAVを通したマーケティングのビジネス書でもある。

本書の中で最も強い主張のひとつが“テーマに忠実にあること”だ。あれもしたいこれもしたい、実際どれも素晴らしい。しかし制約がある中、全てを生かすことはできない。1番テーマに合致したものの為には、2番目以下は全て捨てなければならない。これはどの職業にも通じる話ではないだろうか。その決断から逃げれば誰のためかもわからない、とても不思議な仕事になる。これはAVでも同様だ。何時間とカメラを回し続け良いシーンがたくさん撮れた、しかし商業映像として世に送り出すには決められた120分に納めなければならない。どれだけ拘って撮影したシーンであっても、テーマに沿わない内容であれば捨てる決断をしなければならない。その苦行を乗り越えてこそ良い仕事が市場に流通するのだろう。

このほかにも本書では、商売としての側面からもAV作品そのものや業界の事情などを丁寧に紹介してくれている。本書を手に取り、一度消費者目線から離れ覗いてみてはいかがだろうか。“プロの仕事とは”が詰まった一冊だ。