お金が無いということはどういうことなのか。
貧乏と暴力に彩られた著者の10代。
貧困がもたらす抜け出すことのできない貧困のループ。
貧困から抜け出したくても抜け出せない。
貧しさは人から様々なものを奪っていた。
人並みの暮らし、教育を受けさせること、お金が十分にないと諦めなくてはいけないことが次から次に、山ほど出てくる。
そんな親たちの行き場のない怒りは、どんどん溜まっていって、その矛先はどうしても弱い方に向かう。
目の前の生活のしんどさのあまり、子供を本気で殴ってしまう。
「親のようになりたくない」と思った子供も、どうして良いか分からず、地元に残り、同じように子供を殴る親になってしまう。
著者に見えたのは「将来」ではない「行き止まり」。
ギャンブル狂の父は借金苦で自殺。
人間はそのまま行ったら破滅するに決まっている道を、わかっていても歩んでしまう。
心の風邪をこじらせ、よくない風を沢山浴びて、そう生きるしかない道を突き進んでしまう。
お金がなくなると人は、人でなくなっていく。
貧しさは人をそうやってすべてを飲み込んでいく。
貧しさは、不治の病。
著者は、貧しさが土砂崩れのように何もかもを飲み込んでいく町から、母からもらった100万円を持ち上京し、美大に入る。
「この町には、もう、絶対に帰らない」
と心に誓って、著者は東京で生きていく。
お金がないということを身に染みている著者の貧困と暴力、生きていくこと、働くことの意味、それをぜひ、本書で感じてほしいと思います。
もちろん、著者の底抜けに明るくユーモアたっぷりの文章に、ときには笑わせてもらえます。
お金ってなんなのか?
「お金」の持つ側面を著者の人生から「貧困」を通して見つめてみる。
貧困の生々しさがもたらす胸の痛みとともに、今よりも、少し「お金」のことや「働くこと」の意味が理解できるのではないでしょうか。
読んだ後、少し、胸が苦しくも切なくもなりますが、著者の明るく逞しい生き方に元気づけられます。
「お金」について考えている人、悩んでいる人に一読の価値があります。
働くことが希望になる。
これが著者のメッセージです。
- 作者: 西原 理恵子
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/06/23
- メディア: 文庫
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