本書は大手新聞社を辞めて、自由に生きるという選択をした、50歳独身女性の物語だ。
私が住んでいる地方の経済は、はっきりいって疲れ切っているのが、顕著に分かる。著者が地方に転勤で住んでいたとき、都会で何年も金満生活を送っていて「買いたい」というものはそれほどない。都会ふうの店、都会ふうのレストランというのは、やっぱり都会そのものではない。つまり、地方では「金満生活による幸福の追求」を諦めざるおえないのである。
なので、それまで何かを得ることが幸せだと思っていた。しかし、何かを捨てることこそが本当の幸せの道なのではないか。こうなってくると、お金を使わなくてもハッピーなライフスタイルどころか、お金とハッピーの関係すらわからなくなってきたのである。
そして「お金が欲しい」と思っている人のところへは、なかなか集まらない。いったんは集まったとしても、すぐに離れていってしまう。なぜならすぐ使ってしまうからだ。ところが「もうお金は別にいいや」と思った瞬間に、何だかお金の方から近づいてきて、しかもなかなか離れていかない。
世の中の経済は、何しろモノが売れない。それは、各々の会社や製品の問題ではなく、会社の構造がもうそうなっているのだ。みんな、すでにモノはたくさんすぎるほど持っている。しかし、それでは会社が行き詰まって困ってしまう。そんな中で利益を上げようとする方法は2つしかない。「働く人を安く使い捨てにすること」「客をだますこと」つまり、非正規労働者や外部の労働力を安く買い叩くか、過剰なテクニックを駆使して必要なもののように思わせて買わせるか。
つまり、会社が生き残ろうと、もがけばもがくほど不幸になる人が増えるということだ。そんな時代に突入しているのだ。
今の世の中は困っている人はとにかくたくさんいる。ということは、それだけ仕事もたくさんたくさんあるはずだ。そう思えばお金とか、就職とかってことにこだわらなければ、もう死ぬまでの間、楽しいことがなくなるっていうことがない。
自分を1人の人間として、つながる。人を助け、そして助けられる。そんな関係を1から積み上げていけば、無職でも生きていくことができるはずだ。っていうかそうやって生きていくしかないんだよね。