『Harvard Business Review 2017年8月号 ブロックチェーンの衝撃』 (ダイヤモンド社)
毎号毎号知的好奇心を掻き立ててくれるHBR。
特に今月号は素晴らしかった。
メインテーマはタイトルにもあるようにブロックチェーン。
ブロックチェーンに関する論文が4本に加えインタビューが1本という特集だ。
まず、1本目の論文。
ブロックチェーンの後の世界について、ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締が論考した内容となっている。
全体的になにかソーカルライクの気もするのだが、ブロックチェーンに関して重要な視点を提供してくれる。
ブロックチェーンとはビザンチン将軍問題(二重支払い問題)を計算量及び電力に代えているだけだというのだ。
しかも電力に関して、2020年にはデンマークの消費電力とビットコインのマイニングにかかる電力が等価になるとの論文もあるそうだ。
ブロックチェーンの普及にはエネルギー問題の解決が欠かせないという点は見逃せない視点だ。
続いて、2本目の論文。
『ビットコインとブロックチェーン』の翻訳者がブロックチェーンについて説明した論文であり
技術的に詳しくなくても大変平易に記載されており、わかりやすい。
3本目の論文は、なぜ単なる電子データに価値を感じるのかについて歴史を通して考察している。
その際に、通貨を2つの種類に分解しているのだが、その考え方がとても面白い。
通貨には、クレジット型とトークン型に別れる。クレジット型とは国がその価値を認めた法定通貨のイメージだ。
一方で、トークン型は台帳を絶対的な真としてその価値を認める。まさにビットコインがそれだ。
しかし、この論文はこれだけでは終わらない。
今までの歴史を紐解くと、トークン型の通過には何か物理的な信頼できるものの存在があったというのだ。
具体的には金貨だ。この金に対してある種の偶像的な崇拝、信頼をすることによって台帳及び通貨を絶対真としてきた。
これが、電子である現状に対して、人類は適応できるのかを問われていると締めている。
4本目の論文は、HBRのオハコである破壊的なイノベーション論を用いてのブロックチェーンはすぐにでも普及するかを考察する論文だ。
結論は、ブロックチェーンは破壊的なイノベーションではないので、すぐ普及しないというものだ。(私は全くそうは思わない。)
ブロックチェーンは基盤技術であり、基盤技術が普及するには4つのフェーズ、単体での利用、代替的な利用、局地的な利用、変革的な利用が必要であるというのだ。
(繰り返すが私はそうは思わない。)
最後に、永久不滅ポイントで有名なクレディゾンの社長のインタビューがある。
「ベンチャーと大企業が対等に話をするのは当たり前だ。」と言ったメッセージはモチベーションになる。
ブッロクチェーン特集の他にも、毎週連載の濱口氏のプライシングに関する考察も当たり前のことをものすごくビジュアライズに説明しており一読するに値するし、
入山先生の経営理論についての連載も大詰めを迎えており、戦略とは何かといったものすごく抽象的な内容をズバリ説明しており大変面白い。
(因みに僕はポーターのポジショニング理論が嫌いで、RBV信者)
本当に今月は隅から隅まで面白く、本当に知的興奮を覚える。
こんな面白い雑誌が2,000円で買えるなんて、つくづく良い時代に生まれたと思う。